地域の非営利団体に協力する「一食地域貢献プロジェクト」(4) NPO法人自立支援事業所「ベトサダ」(札幌北教会が支援)
NPO法人の自立支援事業所「ベトサダ」は北海道札幌市の住宅地にある。路上生活者が自立できるまでの3カ月間、札幌市の委託事業として、衣食住の供給をはじめ求人情報の提供や相談といった就労支援、医療費減免手続きなどのサポートを行う。現在、20~50代の男性11人が仕事をしながら共同生活を送る。
朝7時過ぎ、ジャージ姿の中年男性が食堂に入ってくると、山﨑貴志代表理事はニコニコしながら声をかける。「職場には慣れましたか」。
男性は少しはにかみ、「おかげさまでだいぶ慣れました。何とかやっていけそうですわ」と、山﨑さんに顔を向け、しっかりとした口調で答えた。
厚生労働省の調べによると、ホームレスの人は全国で約6200人を数える。数は年々減少しているものの、「10年以上」路上生活が続く人の割合は増え、平均年齢は60歳を超えたという。
路上生活者は、失業した上に、借金やギャンブル、飲酒などにのめり込み、困窮して家賃が払えず、住居を追われるケースが多い。それに加えて親きょうだい、友人や知人といったあらゆるつながりが断ち切られた孤立状態にある。
「人間は一人では生きていけません。職に就いて人と信頼関係を築き、社会との絆を結び直して自立した生活を取り戻してほしいというのが私たちの願い」
そう語る山﨑さん自身、かつて路上生活を送った体験を持つ。
ベトサダの設立は、創設者の故・眞鍋千賀子さんが札幌駅でごみ箱に手を突っ込むホームレスの姿に衝撃を受け、ボランティアで始めた炊き出しに遡(さかのぼ)る。クリスチャンだった眞鍋さんは、カレーやおでんの入った大鍋を抱えて地下鉄を乗り継ぎ、札幌駅周辺で振る舞った。山﨑さんら男性職員は皆、眞鍋さんに助けられ、路上生活者支援に取り組むようになった。「眞鍋さんは人への愛を説き、それを原動力に活動に従事された。遺志を継ぎ、ベトサダはこれからも、ここから再出発した人々が立ち寄れる“家”でありたい」と山﨑さんは話す。
2カ月前からベトサダで暮らし始めた40代男性は「この場所から人生をやり直したい。もう私は独りではない。手を差し伸べてくれる存在がいることを、ベトサダで知りましたから」と決意を口にした。
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この企画では、立正佼成会「一食(いちじき)地域貢献プロジェクト」が支援する団体の活動を紹介する。
メモ:一食地域貢献プロジェクト
「一食を捧げる運動」の浄財の一部を全国各教会が主体的に活用し、地元のニーズに応えて活動する非営利団体の支援を通して、温かな地域づくりに協力している。なお、「一食を捧げる運動」とは、月に数回食事を抜く、あるいはコーヒーなどの嗜好(しこう)品を控えて、その食費分を献金して国内外の諸課題に役立てる取り組み。
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