WCRP国際名誉会長のセリッチ師 タリバン指導者への公開書簡を公表

公開書簡を公表したムスタファ・セリッチ師

ボスニア・ヘルツェゴビナのイスラーム指導者で、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際名誉会長のムスタファ・セリッチ師がこのほど、アフガニスタンの実権を掌握したイスラーム主義組織タリバンの指導者アブドゥル・ガニ・バラダル師に向けた公開書簡を公表した。イスラームの同胞として、アフガニスタンで、本来のイスラーム思想に基づく平等で平和的な政権運営が行われることへの期待を表明したもの。公開書簡は、WCRP/RfPの宗教指導者にも送付された。

セリッチ師は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争終結後、同国の諸宗教評議会(IRC)の設立に貢献。現在も民族間の対話と融和に努めている。長年、WCRP/RfP国際共同会長を務めるなど、国際的な諸宗教間対話・協力活動や平和構築の取り組みにも尽力。同共同会長(当時)として同国の宗教者間の仲介役にあたった立正佼成会の庭野日鑛会長とも交流が深く、本会の教団創立60周年記念式典にも参加している。

書簡の中でセリッチ師は、アフガニスタンの国民が、1996年から2001年までのタリバン政権による抑圧的な統治を経験し、新政権下でも女性をはじめ人々の権利が侵害されることへの恐れを抱いていると指摘。本来の「シャリーア」(イスラーム法)は自由が保障された中でこそ適用が可能であることや、イスラームの聖典「クルアーン」は「宗教には強制力はない」という普遍的で明確なメッセージを発していることを明示した。

さらに、全能の神アッラーの使徒ムハンマドが最後の説教で、全ての人々に優劣はないと宣言したことに触れ、「イスラームは人種と部族の差別を廃止した」との見解を示した。

その上で、タリバンがアフガニスタンや国際社会の舞台に再び戻ってくることは、タリバンにとどまらず、世界の全てのムスリム(イスラーム教徒)の問題でもあると強調。アフガニスタンが西洋やイスラーム世界の全ての政権に対する「反乱分子の避難所」になることに深い憂慮を示した上で、バラダル師に対して「私は全能の神アッラーに、アフガニスタンの知的潜在能力が、アフガニスタンと私たちウンマ(ムスリム共同体)の利益のために、完全に花開く経験ができることを祈っています。あなたが広い心を持ち、善意あるすべての人々に手を差し伸べれば、アフガニスタンを知恵と技術のオアシスにできる機会となるでしょう」と呼びかけている。