教皇 「シリア国民に希望を」と国際社会の連帯を訴え(海外通信・バチカン支局)
民主化を求める「アラブの春」がシリアに波及し、政府に対する最初の抗議デモがダマスカスで起きてから、3月15日で10年を迎えた。ローマ教皇フランシスコは前日の14日、バチカンでの正午の祈りの席上、デモを発端に内戦へと発展した同国の惨状について言及した。
2011年以降、同国では政府軍と反政府組織による内戦が続き、これまでに40万人以上が犠牲となった。国内避難民は610万人以上、周辺諸国に逃れた難民は550万人を超える。21世紀で「最悪の人道危機」といわれている。国連安全保障理事会ではこれまで、シリア情勢に関する決議案が15回以上提出されているが、ロシアや中国による拒否権の行使で採択されていない。
教皇はスピーチの中で、「数えきれないほどの死者、数百万人の難民、行方不明者を生み、破壊と、あらゆる形での暴力によって、シリアの子供や女性、高齢者など、より弱い立場にある人々に筆舌に尽くし難い苦しみを与えた」と指摘。「紛争に関わる人たちが善意を示し、疲れ果てた(シリアの)国民に希望を与えることができるように願う」と訴えた。
また、「武装解除がなされ、社会の絆が再び紡がれ、経済活動が再開されていくために、国際社会はより良き連帯を基に大いなる努力を」と要請した。シリア国民の大きな被害が忘れられることなく、国民に平和がもたらされるようにと、「天の元后聖マリア」に祈りを捧げた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)