原爆犠牲者のために祈る米国のカトリック教会(海外通信・バチカン支局)
広島、長崎に原爆が投下されてから75年を迎えるにあたり、米国カトリック司教会議はこのほど声明文を公表し、日本国民と共に「犠牲者を追悼し、この悲劇的な攻撃によって医療、環境などの分野で代価を払い続けてきた世代のために祈る」と表明した。
同司教会議の議長を務めるホセ・オラシオ・ゴメス大司教(ロサンゼルス大司教区)が、その内容を詳しく伝えた。
同司教会議は声明文の中で、「重大な意味を持つこの(75年という)時に私たちは、ローマ教皇フランシスコが私たち(米国)と世界の指導者に向けて投げ掛けた、地球上にいる人類の生存を脅かす大量破壊兵器を廃絶していくようにとのアピールに声を合わせる」と強調。国家間、人種や民族間での対立に戦争を用いることなく、平和的な解決の道を見いだしていく選択をするよう訴えている。
8月9日を「核軍縮のために祈り、研究し、行動を起こす日」と定める米国のカトリック司教たちのイニシアチブは、日本のカトリック教会が1981年の教皇ヨハネ・パウロ二世の広島訪問以来、同6日から15日にかけて開催している「平和旬間」の取り組みにも呼応するものだ。
ドイツのカトリック司教会議「正義と平和委員会」、福音教会評議会(プロテスタント)もこのほど、原爆投下75年に向けて、「核戦争と大量破壊兵器による抑止論は過去の亡霊ではない」とする合同声明文を発表した。
この中で両団体は、世界には現在も1万6000発の核弾頭があり、その存在が今も戦略的な重要性を強めていると指摘。現状は暴力にあふれ、サイバー攻撃、テロ、貿易戦争なども激化していると述べた。
その上で、現教皇フランシスコが2019年に広島で発信したスピーチを踏まえ、核エネルギーの軍事使用と核兵器による抑止論を「非倫理」と厳しく非難。原爆犠牲者を追悼するにあたり、政治指導者に対して、核兵器のない世界の構築に向けた明確な歩みを示すよう訴え、ドイツ政府に対しても国連で採択された核兵器禁止条約への批准を求めていると伝えた。
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