原爆犠牲者のために祈る米国のカトリック教会(海外通信・バチカン支局)

ナゴルノ・カラバフ紛争の解決を――ロシア正教会、WCC

ロシア正教会のキリル総主教は7月23日、アルメニアとアゼルバイジャンの両国首脳に向け、ナゴルノ・カラバフ紛争の平和的解決への交渉を開始するよう訴えた。同12日に、両国の国境で軍事衝突が起きたことを受けてのもの。世界教会協議会(WCC)のイオアン・サウカ暫定総幹事はこれに先立つ16日に、ローマ教皇フランシスコも19日に同様のメッセージを公表した。

アルメニア正教会の信徒が人口の大半を占めるアルメニアと、シーア派のムスリム(イスラーム教徒)が多く住むアゼルバイジャンは、ナゴルノ・カラバフ自治州の帰属を巡り対立を続けている。同自治州はアゼルバイジャン領だが、人口の8割をアルメニア人が占め、ソ連時代の1988年にアルメニアへの編入を要求。91年には独立を宣言した。

アゼルバイジャンはこれを認めず、両国は紛争に突入。94年に停戦合意が結ばれたものの、ロシアに支援されるアルメニア、トルコの支援を受けるアゼルバイジャンという構図へと変化していき、断続的な軍事衝突が絶えない。このカフカス地域の紛争は、世界で「忘れられた紛争」と呼ばれる。

12日に突如として起きたアルメニア、アゼルバイジャン両軍の戦闘は、激しい砲撃戦へと発展した。ロシアとトルコの介入を恐れて両軍はすぐに戦闘を中止したが、両国の相互不信が浮き彫りとなった。

キリル総主教は、これまで両国の諸宗教共同体が和解に向けた対話を構築してきたことを強調し、「新たな戦争は、カフカス地域の平和と長期的な安全保障を脅かし、テロリストや過激主義者を引き寄せる」との懸念を表明。「私たち(ロシア)にとって友愛の国民であるアルメニアとアゼルバイジャンの両国民が、敵対関係に終止符を打ち、不信感の高まりを抑制し、互いが受容できる解決策を模索するように」と訴えた。

教皇フランシスコは19日、バチカン広場で行われた正午の祈りの席上、新型コロナウイルスによる経済的、社会的影響に言及。同ウイルスと紛争の両方に苦しむ人々の現状に触れ、コロナ禍を理由に7月1日に国連安全保障理事会で採択された、「紛争地での90日間の即時停戦」の決議を説明した。その上で、アゼルバイジャン、アルメニア両国で軍事的な緊張が高まっている状況に思いを寄せ、「国際共同体の努力と、両国の対話によって永続性のある和平合意が成立し、両国民の善を追求しての解決策が見いだされるように」と願った。

サウカWCC暫定総幹事も、両国に緊張の緩和を求める声明文を公表。同ウイルス感染症の世界的な流行は両国にも大きな被害をもたらしていると述べ、「WCCは、国連の呼び掛ける世界レベルでの停戦案を支持する。両国は、全ての資源を新型コロナウイルスとの闘いに向けるべきだ」との見解を示した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)