TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・河原史弥さん Vol.3
大学生の時に、演奏会の裏方のアルバイトで東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)と出合い、その後にトランペット奏者としてプロの道に入った河原史弥さん。入団して5年が経ち、佼成ウインドらしいハーモニーを大切にしながら、独自性も追求する。現在のやりがい、さらに今後の目標について話を聞いた。
仕事の魅力は出会い
――音楽は癒やしの要素もありますが、音楽を聴いて支えられた体験はありますか?
あまりないですね。これからあるかもしれませんが。悲しい時や苦しい時に音楽を聴くということはほぼなくて、気持ちをよりポジティブにするために聴くというのがほとんどですね。自分の好きなプレイヤーのCDを聴いたり、演奏動画を視聴したりするとモチベーションがすごく上がります。
ベルリン・フィル(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)で演奏されていたガボール・タルケヴィさんのトランペットの演奏を聴くたび、感化されました。自分もこういうふうに吹けたらいいな、こういう音が出したいんだよなって刺激を受けて、自然と練習に力が入るのです。
歌詞が入っている曲は、あまり知らないんですよ。流行の曲とかもそうです。中高生の頃からミュージックプレーヤーには、クラシックしか入っていませんでした。この分野に関しては友達と話が合わなくて、カラオケに行っても、もっぱら聴く側です(笑)。
――探究心が原動力となって、ここまで歩んできたと話していましたが、現在の仕事のやりがいをどんなところに感じていますか?
まず、自分の好きなことが仕事になっているのは、それだけでうれしいことです。自分が小さい頃から望んできた分野で、仕事を頂いているわけですから。小学生の時にトランペットを持った瞬間から「うまくなりたい!」という気持ちは、今も変わらず燃え続けています。
佼成ウインドでは、「ドラゴンクエスト」シリーズの演奏会を重ねているのですが、毎回、同じ演奏の仕方をするのではなく、少なくとも演奏のクオリティーは維持しながら、「次回はここの部分を、もっとこうしてみよう」と、より良いものを目指して取り組んでいます。どんな時でも、さらにうまく吹くためにと工夫し、上を目指す――その意識を大切にしたいと思っているのです。そうして、チャレンジ精神や向上心を持ち続けられることが、やりがいですね。
演奏の技術を維持する、高めていくには日々の練習が欠かせません。練習は大変といえば大変ですけど、「練習しなければいけない」と、義務感や縛られている感覚は全くないんです。大変ですが、同時に楽しい。やっぱり音楽が、トランペットが好きなんですね。
楽団員であり、奏者であるという現在の仕事の魅力は、多くの人と出会い、さまざまな接点を持てることです。思っていた以上に人間関係が広がっていると感じて、自分でも驚きを感じることがあります。楽団内だけでも30人以上の人と触れ合い、音楽だけでなくいろいろな話ができ、楽団の外でも仕事の依頼を受けて現場に行くと、そこで出会いを頂いて、また輪が広がる。人って、それぞれに個性があり、独特の良さを持っていますよね。そのすてきなところを感じられるのは刺激的で、この仕事の魅力の一つだと思っています。今は毎日が新鮮です。
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