WCRP/RfP日本委の「震災から9年目をむかえる宗教者復興会合」から セッション3「『これからのいのち』への責任」

パネリストたちは、震災の教訓を未来に生かすため、活発に意見を交換

日頃からの交流が災害時支援の鍵

「『これからのいのち』への責任」と題したセッションでは、大阪大学大学院の稲場圭信教授、宮城大学の佐々木秀之准教授、「福島子どもが自然と遊ぶ楽校ネット」幹事の江川和弥氏、浄土宗愚鈍院の中村瑞貴住職、「チャーチ・ワールド・サービス(CWS)ジャパン」の小美野剛事務局長がパネリストとして発表。世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の國富敬二事務局長がコーディネーターを務めた。

この中で、宗教団体による防災・減災の取り組みを研究する稲場氏は、近い将来に大規模地震の発生が予測されながら、行政や市民の防災への意識が低い傾向にあると指摘。大阪大学が行政や宗教団体等と協力して開発した、全国の避難所や宗教施設など約30万件のデータをインターネット上で公開する「未来共生災害救援マップ」などを紹介し、日常から防災対策を行う大切さを確認した。

また、東日本大震災発生後に宗教者がさまざまな支援活動を展開したことに言及。それらの成果や課題を今後に生かすため、WCRP/RfP日本委など3団体により作成された「『防災と宗教』クレド(行動指針)」を紹介し、宗教団体が行政と災害時応援協定を結ぶなど、積極的に防災対策を行うことで命を守れると話した。

加えて、超宗派による危機管理室を設置するなど、防災に関する情報交換、緊急支援活動のあり方などを共有し、災害発生時に備える必要性を伝えた。

福島県で子供の教育活動を展開する団体のネットワーク組織を運営する江川氏は冒頭、同県内でのいじめ認知件数、児童虐待相談件数が近年、増加傾向にあることを指摘した。そして、その責任を学校に問うだけでは問題解決に至らないとし、学校、地域社会、家庭がそれぞれの役割を明確化し、包括的に対応していくことが大切と述べた。

続いて、子供たちが自然災害に直面した時、自らの命を守るための適切な行動を判断できるかが大事であると説明。そうした力を養うには、「子供に教える教育から、子供の自己決定を尊重する教育に転換していく必要がある」と訴えた。

さらに、「自立」とは他の援助を受けずに生きることではなく、つらい時に頼れる人や場所を増やしていくことであると持論を展開。「子供がさまざまな価値観、考えに触れて多様性を尊ぶ心を育んでいけば、少子高齢化の中で新しいコミュニティーをつくる一助になる」と強調した。

中村師は、震災発生時に仙台市と仙台仏教会が災害時応援協定を結んでおらず、宗教者が行政と情報共有できず犠牲者の弔いや支援活動に対応できなかったことを述懐。その後に遺族らの心のケアにあたる「心の相談室」の立ち上げに携わるなど支援活動を行い、震災を通した教訓を未来に生かしたいとの思いで、「『防災と宗教』クレド」の作成にあたったと語った。

また、「祈りによって宗教的な場を創出する」「何人(なんぴと)に対しても宗教施設を開放する」などの例を示し、災害時に宗教者が果たすべき役割を確認した。

最後に、同クレドの各項に記される「共に」という文言に触れ、災害発生時に命を守るには、人と人とのつながりを強めることが重要と力説。人間関係が「平常時につながっていないのに、災害時にそれをできるのでしょうか」と問題提起し、宗教者が率先して地域社会と連携し、共助関係を構築することが大切と述べた。(了)