教団付置研究所懇話会「生命倫理研究部会」 臓器移植に関する生命倫理
立正佼成会の中央学術研究所が加盟する教団付置研究所懇話会「生命倫理研究部会」の第18回研究会が3月23日、京都市の浄土宗宗務庁で開かれた。オブザーバーを含め10教団の付置研究所と1財団法人から20人が参加。中央学術研究所から学術研究室の相ノ谷修通室長ら3人が出席した。
生命倫理研究部会は、同懇話会に設置された分科会の一つ。「脳死・臓器移植」「安楽死・尊厳死」「生殖補助医療」「再生医療」など生命に関わる諸課題について意見を交わし、共同研究を行っている。
2010年に改正臓器移植法が施行され、本人の意思が不明な場合には家族の承諾で臓器が提供できるようになるとともに、脳死状態にある15歳未満の人からの臓器提供も可能となった。この施行後、「脳死・臓器移植」に対し、宗教的な知見に基づいた声明発表や研究が減少している実情を踏まえ、今回の研究会は開かれた。
当日は、大本教学研鑽所事務局主幹の斉藤泰・同研究部会長があいさつ。続いて、『臓器移植に関する生命倫理言説の非宗教化で問題は解決するか?――アメリカの生命倫理研究を参考に』をテーマに、大谷大学の藤枝真准教授が発表に立った。
藤枝氏は冒頭、臓器移植を推進する日本の現状を示しながら、「脳死・臓器移植」について、「脳死」を一律に人の死とすることに慎重な姿勢を取っていた多くの仏教教団の考えと、社会との間に隔たりがあるとの認識を示した。加えて、藤枝氏の研究によると、脳死や臓器移植を容認するようになった社会状況に合わせ、多くの教団が宗教的見地からの発言を控え、一般的な言葉で見解を発信していると指摘。教団独自の宗教的な語彙(ごい)を使わない宗教者の発言は社会的影響が薄く、「脳死・臓器移植」にどのように関わっていくのか、と問題提起した。
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