TKWO――音楽とともにある人生♪ ホルン・木村淳さん Vol.3

プロのホルン奏者として40年のキャリアを持つ木村淳さんは、楽器へのこだわりも格別だ。楽器づくりに携わった経験に話が及ぶと、思い入れがあふれ出してくる。音楽の道を志す学生たちへのメッセージも紹介する。

アジアメーカーのホルンと出合い、楽器の改良を重ねて

――マウスピースは自作ということでしたが、木村さんが今使用している楽器はどういうものですか

僕が監修した楽器で、ブラスパイアというダブル(F管、B♭管の2種類の管が一緒になった構造)のフレンチホルンを使っています。ドイツの伝統的なモデルを踏襲した上で、さまざまなジャンルの音楽に対応できるよう、柔軟性と幅広い表現力を追求し、製作者と共に改良したものです。

楽器の監修は20年ほど前に始めました。きっかけは、ある台湾メーカーのホルンに出合ったことです。日本以外のアジアの楽器は相対的に安価な製品ですから、吹きやすさという点で、正直あまり期待していなかったのですが、実際に吹いてみると、印象が非常に良かったのです。

〈これは改良すれば相当なものになる!〉とひらめき、アドバイザーのような形で製作に携わるようになりました。以来、欧米の楽器と比較にならない安い値段で、質の良い楽器を提供できるようになりました。

その後も中国製のホルンをはじめ、さまざまなメーカーの楽器を取り寄せ、日本で改良を加えていきました。改良すれば必ず良くなりますので、楽しいですね。どんな楽器も欠点はありますから、今ではむしろ手を加えずに使える楽器はない、とさえ思っています。

――TKWOの楽団員として、思い出に残っている演奏は?

1989年にヨーロッパで初めて演奏した時のことは忘れられません。スイス、オーストリア、フランス、イギリス、オランダと5カ国を巡り、演奏しました。初めての経験ということもあり、“良いものをつくろう”という皆の気持ちがひと際高まっていました。

ヨーロッパではそれまで、TKWOのレコードやCDが売られていて、一定の認知度はあったようですが、実際の演奏を聴いたことのある人はほとんどいませんでした。そうした場所に行き、演奏したのです。

僕たちの演奏を初めて聴いたヨーロッパの人たちは、びっくり仰天した、と後から聞きました。この演奏会で、非常に高い評価を得られたことは、とてもうれしかったですね。

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それともう一つ。2002年のシカゴでの演奏は素晴らしかったと自負しています。フレデリック・フェネルさん(TKWO桂冠指揮者)が指揮を務めたのですが、フェネルさんが醸し出す“空気”が普段と異なり、それに引っぱられるように全体も良い意味で高揚していました。まさに神懸かっていたのです。そうした雰囲気が、聴いている客席の反応からも伝わってきましたし、僕たちとしても最高の演奏ができたと思っています。それがフェネルさんとの最後の演奏になってしまいましたが、あの時の空気は別格でした。

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