年頭法話 立正佼成会会長 庭野日鑛

自立した信仰へ

教団創立八十周年の節目 礎を築いた先達のご恩に報いる決意

あけまして、おめでとうございます。

昨年、私は、年次方針を通して、『「有り難し(ありがたい)」「感謝(ありがとう)」のこころを、日常生活の中で表現し、実践してまいりましょう』と申し上げました。このことを、大勢の信者さんが、自分の「テーマ」にされ、職場や地域、家庭で実践してこられたことを、教会長さんはじめさまざまな方からお聞きしました。また大聖堂の体験説法からも、うかがい知ることができました。

釈尊の教えを突き詰めると、最後は、「有り難し」「感謝」に行き着くと教えられています。この一番大事なことを、これからも常に心に刻んで、精進してまいりたいと思います。

さて今年、本会は、教団創立八十周年の節目を迎えます。八十年という歳月の中では、開祖さまが五十四年、私が二十六年、会長の役を務めてきました。

振り返りますと、開祖さまも私も、一貫して仏さまの教えをお伝えし、それを信者さんが真摯(しんし)に受けとめ、実践してくださった――簡潔に表現すれば、そのことに尽きると思っています。

その中でも、開祖さまが本会を創立され、次第に法の輪が広がっていった時期は、戦前、戦中、戦後という、まさに激動の時代でした。当時は、貧病争(ひんびょうそう)の苦しみから逃れることが、人々にとって最大の願いでもありました。そして、本会の先輩幹部さんたちは、自らも困難な状況にありながら、優しく、時には厳しく、また方便を駆使(くし)して、人々を救い、仏道に導いてこられました。

総じて昔の幹部さんたちは、あまり長い話をせず、簡潔な言葉で、人の心を動かす力があったと思います。時には、突き放すような表現に聞こえても、そこには、相手の幸せを一心に願う深い愛情がありました。

「人さまを何とかお救いしたい」――その慈悲の心が、脈々と受け継がれて、今日の佼成会の土台になっていったのであります。

そうした諸先輩への感謝の思いも込めて、私は、「平成三十年次の方針」を次のように示しました。

天地自然は、一瞬もとどまることなく、創造、変化を繰り返しています。私たちもまた、天地の道理の如く、停滞することなく、何事に対しても、日々新たな気持ちで取り組んでいくことが大切であります。

今年、本会は創立八十周年の節目を迎えました。その今日に及ぶ歴史の礎(いしずえ)は、開祖さま、脇祖さまをはじめ、先輩の幹部の皆様、信者さんの寝食を惜しまぬご尽力によって築かれてきたものです。

この記念すべき年に当たり、教団創立百年に向けて、一人ひとりが、創造的な歩みを進める確(かく)たる志をもって、そのご恩に報いてまいりたいと思います。

「方針」では、先達(せんだつ)に恩返ししていく大切さと同時に、組織も個人も、常に「創造」を志すことが肝心であることをお伝えしました。

このことについて、中国の『淮南子(えなんじ)』という書物に、印象深い言葉が遺されています。

「行年(ぎょうねん)五十にして四十九の非(ひ)を知る。六十にして六十化(け)す」

五十歳になったら、それまでの四十九年の生き方を反省し、また新たな気持ちで再出発する。六十歳になったら、その歳に相応(ふさわ)しい変化を志す、という意味合いです。

五十歳、六十歳といえば、人間としてある程度出来上がってくる時期です。それでもなお新鮮さを失わず、進化し続ける。それは、維新――絶えざる創造――ということであり、どんな年齢の人にも当てはまることではないでしょうか。

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