マラウイの子どもたちの未来を紡ぐ「学校給食プロジェクト」 本会一食平和基金運営委 現地を視察

人生を変える原動力に

一行は、首都リロングウェから約500キロ北に位置し、タンザニアとザンビアの国境に近い同国最北部のチティパ県を訪問。チャバ小学校と幼稚園、チェンド小学校と幼稚園を視察した。この4施設では、24年12月から給食の提供が行われている。

4月28日朝、チェンド小学校を訪れると、英単語を発音する子どもたちの活発な声が教室から聞こえてくる。元気な声に耳を傾けながら、保護者らが近くの炊事場で給食のおかゆ作りに励んでいた。粉末状にしたトウモロコシと大豆、ピーナツのミックス粉を沸騰した湯で煮込み、最後に塩と砂糖で味を調える。素材の風味を生かした素朴な味わいだが、栄養価は高く、腹持ちも良い。

子どもの健康と健やかな成長を願い、保護者たちは毎日、給食のおかゆ作りに励む

午前10時、給食の時間になると児童が一斉に教室を飛び出し、長蛇の列を作った。給食を受け取った子どもたちは地べたに座り、うれしそうにおかゆを口に運ぶ。その様子に、児童の保護者で給食作りを担うルーテナス・シマンザさん(22)は、「多くの子どもがうれしそうに給食を食べている姿を見ると、私も幸せな気持ちになります。この支援に私たちがどれだけ感謝しているか、日本の皆さんに伝えたい」と笑みを浮かべた。

マラウイの小学校(8年制)は義務教育だが、出生登録の不備で入学が遅れたり、入学しても空腹で動く気力と体力が失われることで欠席が続き、進級試験に受からずに留年や中退したりする児童が少なくない。そのため、成人年齢(18歳)を迎えても小学校に通っている人もいる。厳しい状況の中、給食があることで子どもたちは食べ物を求めて学校に通い、勉強に励んだり、友達と遊んだりできるのだ。

ジャクソニ・カワタ・キータ校長は、「給食が始まって欠席率や退学率は劇的に減り、子どもたちも集中して授業を受けられるようになったことで成績も上がりました」と語った。貧困に苦しむ子どもたちの“お腹(なか)”を満たすだけでなく、将来の夢や希望をかなえ、未来を切り開く原動力にもなっている給食――。さまざまな課題に複合的に働きかけられる同プロジェクトの意義は決して小さくない。

一行は期間中、児童の家庭にも足を運んだ。チェンド幼稚園に通うデクソニ・カニーカ君(6)は、レンガ壁にわらぶきの家に、母親のローズメリー・ニョンドさん(39)と、5人のきょうだいと暮らす。同プロジェクトが始まる前、カニーカ君は体が弱く、病気がちで、家にいることが多かった。食料不足が特に厳しい雨期には、丸一日何も食べることができない日もある中、母親が何とか見つけてきた近所の農作業を一緒に手伝い、その収入でどうにか食いつないでいたという。

家庭訪問では困窮する生活の様子に耳を傾けた

「うちの子は私を助けてくれる優しい子ですが、やっぱり幼稚園に通ってほしいと思っていました。今は給食のおかげで幼稚園に行けるようになり、体は強くなりました。幼稚園の様子を楽しそうに話す姿に私も喜びを感じます」とニョンドさん。カニーカ君は、「給食は甘くておいしい。おかゆを食べた後にみんなで歌ったり踊ったりする時間がすごく楽しい」とはにかんだ笑顔を見せた。

MRCSのエリオット・ナゾンセ学校給食事業責任者は、「日本の皆さんが食事を抜いて祈り、空腹感を体験しながら献金するのはすばらしい志です。この事業は着実に成果が出て、マラウイの子どもたちの人生を変えています。これからも事業を継続・拡大し、支援を必要としている全ての学校で行えるように努めます」と語った。

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