令和6年次「お会式・一乗まつり」 爽やかな秋空の下 笑顔で行進

「一乗行進」では東京教区の教会と共に地方教会の隊列が参加。活気あふれる行進を繰り広げた

朝方の雨はすっかりやみ、爽やかな秋風が通りを吹き抜ける――。10月20日午後0時半、東京・杉並区の普門エリア。普門館から遷座された〈全ての衆生を慈しみ、安らぎと希望を与える〉聖観世音菩薩像を背に、法被姿の東村山教会青年男子部長(38)が力強く宣言する。

「一乗の世界は、誰も排除されず世界中の人々が救われる世界です。その理想を実現するために皆で力いっぱい、笑顔で行進させて頂きます」

この発進宣言を合図に、立正佼成会の令和6年次「お会式・一乗まつり」(一乗行進)がスタートした。

生き物のように舞い上がるバレンに、沿道から歓声が湧き上がった

天まで届けとばかりに舞い上がるバレン、街路にとどろく笛、鉦(かね)、太鼓、気合いのこもったお囃子(はやし)。スローガン『ダイナミックにいこうじゃないか!』の下、東京教区を中心に23隊3110人が、中野本郷通りを東円寺会館から大聖堂正面玄関、法輪閣駐車場まで470メートルにわたりエネルギッシュに練り歩いた。その雄姿を沿道から約1万8000人が見守った。

「お会式・一乗まつり」は、日蓮聖人の遺徳を偲(しの)ぶとともに、法華経に込められた「一乗精神」によって「人を救い、世を立て直す」との一心で生涯を貫いた庭野日敬開祖に、追慕・讃歎(さんだん)・報恩感謝・継承・誓願の機縁とするもの。

「発進式」に先立ち午前9時から、大聖堂で「一乗行進祈願供養」が厳修された。庭野光祥次代会長が導師をつとめた読経供養に続き、練馬教会の青年婦人部員(48)と墨田教会の青年男子部長(36)が、所属教会のサンガ(教えの仲間)から熱い声援を受けながら「誓願の言葉」を発表した。

一乗行進に先立ち、大聖堂で「一乗行進祈願供養」を厳修

婦人部員は難病を患う長男をはじめ家族全員で行進できる喜びを報告。「湧き立つ感謝の思いを胸に、ご法の仲間といのちを精いっぱい輝かせ、パワフルに異体同心で行進させて頂きます」と誓った。一方、男子部長は「お会式を契機に、今日一日を、そこそこの一日ではなく、力いっぱい本気で過ごした一日にしたい」と決意を述べた。

「お言葉」に立った庭野日鑛会長は、10月13日に新潟・十日町市で開かれた「第48回生誕地まつり」に触れ、「生誕地まつりも晴天の中でにぎやかに執り行われました。お二人の誓願の通り、今日の『お会式・一乗まつり』を真剣に元気に、にぎやかに行って頂きたいと思います」と激励した。

行進に趣向凝らし 声援を力に つながりがもたらす感動と喜び

コロナ禍による中断を経て昨年から再開された「お会式・一乗まつり」。今年は、人とのつながりや参加者の自主性・主体性を重視した隊列編成が多く見受けられた。

各隊は特徴ある行進を披露した

蒸気機関車を模した山車に大きな絵画を掲げたのは練馬教会。同区在住の漫画家・魚戸おさむ氏による作品で“あたたかいファミリー”をテーマに人や動物の姿が明るいタッチで描かれ、つながり合う生命の尊さを表現している。また、『つなげるえがお いきいきと』をスローガンに掲げた世田谷教会は、小中高校生と青・壮年部員が1基の万灯を担ぐ「ファミリー万灯」を披露。子どもと大人が心を合わせて万灯行進する姿に見物客は「頑張れ!」と声援を送った。

5年ぶりに行進に参加したのは江東教会。昨年末の実行委員会で、青年部の強い希望から、生誕地まつりとの“ダブル参加”を決めた。先頭に立って手どりに奔走した隊長の青年女子部長(41)は行進後、「コロナ禍で青年部活動は減っていましたが、青年が主体となって働きかけ、両まつりへの参加を実現することができました。行進してくれた仲間と今日の喜びを分かち合いたい」と感想を述べた。

一方、大田教会では、「お会式でマトイを振りたい」という女性会員の熱意から、同教会のお会式史上初めての女子マトイ班が誕生。希望者は20人に上り、今年3月から毎月、男子部と壮年部のサポートを受けながら教会道場で練習を重ねてきた。本番では学生部員から青年婦人部員まで約10人が威勢よくマトイを振った。

同教会は、交流の深い日蓮宗大本山池上本門寺(東京・大田区)の「お会式」にも長年参加しているが、これまで女性がマトイを振る機会はなかった。

転機は昨年の一乗行進。「女性が触れてはいけない仏具はない」との思いから、青年男子部長(30)がマトイへの参加を女性会員に呼びかけた。そこに、女子部の頃からマトイに憧れていた少年部チーフ(50)が願い出て、女性として初めてマトイ班に加わった。夢がかなった喜びを女子部や婦人部の仲間に伝えると、「マトイを振ってみたい」という女性のニーズがとても高いことが分かった。その後、同男子部長と歴代のマトイ担当者が検討を重ね、女子マトイ班の編成が正式に決定した。重量のあるマトイはけがの危険が伴うため、壮年部と男子部の経験者が全面サポート。女子マトイの編成は、教会が推進する「男女関係なく多様な活動に取り組む」という意識改革の一つになった。

「今年は多くの女性会員がマトイにチャレンジできて、喜びもひとしお。教会を挙げてもり立ててくださり、感謝でいっぱいです」と少年部チーフは話す。

約18000人の観覧者が見守った

ダイナミックな行進を繰り広げる隊列を、ゴール地点まで一定速度で歩きながら導くのが先導役の「プラカード」だ。

墨田教会では女子高校生(17)が務めた。短距離走のアスリートだったが、高校入学後、右脚に大けがを負い競技活動を断念。心配をかけたサンガに元気な姿を見せたいと同役を引き受けた。「とても楽しく行進でき、元気をもらえました。皆さんからたくさん励ましの言葉をかけて頂き、何事にも頑張ろうと思えました」。

今年は、地域の特産品などを販売する「一乗物産展」が再開した。大聖堂1階庭園の会場に7教会1団体が出展した。

今年再開された「一乗物産展」に光祥次代会長が訪問、会員と触れ合った

茂原教会は新米を頒布。生産者の同教会壮年副部長(55)は「米不足が“騒動”になった今年、少しでもサンガや市民の皆さんの役に立てれば、との思いで新米を持ってきました。大網白里のおいしいお米を味わって頂ければ」と話す。同教会の新米は15分で完売するほどの人気ぶりだった。

普門エリアでは、佼成学園中学校・高等学校による吹奏楽演奏や子ども向け「キッズランド」、佼成図書館主催の「あおぞら図書」が催され、家族連れなど多くの市民が各種イベントを楽しんだ。

当日、庭野会長と光祥次代会長は、大聖堂前に設置されたテント席から全ての隊列を観覧し、声援と拍手を送った。

大聖堂前の観覧席から、庭野会長と光祥次代会長が全隊列に声援と拍手を送った

いくつもの感動と喜びが生まれた今年の「お会式・一乗まつり」。庭野開祖は生前、万灯行進について、こう説いている。

「参観者も含めたひとりびとりの会員の心の中に、争いを憎み、平和を愛する強い心を養うものであるということ、さらに広宣流布の力強い足音であるということを忘れてはなんにもならないということです」(「佼成新聞」1965年9月10日付から抜粋)

参加者は「一乗精神」をかみしめ、庭野開祖への報恩感謝と今後の精進を誓った

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