核兵器禁止条約の第2回締約国会議を傍聴して 神谷昌道ACRPシニアアドバイザーに聞く

米・ニューヨークの国連本部で5日間にわたって行われた第2回核兵器禁止条約の締約国会議(写真提供=WCRP/RfP日本委)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は昨年11月27日から12月1日まで、米・ニューヨークの国連本部で開催された核兵器禁止条約(TPNW)の第2回締約国会議に、「ストップ! 核依存タスクフォース」メンバーで、アジア宗教者平和会議(ACRP)シニアアドバイザーの神谷昌道氏を派遣した。神谷氏に会議を傍聴した所感を聞いた。

ロシア軍によるウクライナ侵攻が今も続く中、昨年10月にはパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラーム過激派組織ハマスとイスラエルが軍事衝突しました。今回、締約国会議と並行して65のサイドイベントが行われたのですが、核兵器の使用が目前まで迫る中、「この脅威から逃れる唯一の手段は、核兵器を無くすこと」との主張が改めて信憑性(しんぴょうせい)を持って語られました。核兵器を廃絶する努力がいかに正当なものであるかを明らかにしたことが、今回の一番の意義だったと感じています。

一方、危機的状況だからこそ、国の安全をしっかりと保障するために、核抑止が必要不可欠だという国があるのも事実です。今後、核兵器禁止条約が担う役割として、核を持つ国や条約に関心を示さない国をいかに橋渡しし、核兵器を持つ国々も関わるような枠組みにしていくかが大事になると強く意識しました。

こうした厳しい世界状況ですが、今回の会議では三つの成果があったと感じています。

神谷ACRPシニアアドバイザー

まず、核兵器が使われた時の壊滅的な結末を、倫理観や道徳的な側面から訴えるだけではなく、科学的な知見を用いて伝えていくアプローチがとても重要だと再確認できたことです。テーマ別討論会では、科学者による新たな研究成果として、米国とロシアの核戦争が起きた場合、北半球一体が爆風と熱線、放射能にさらされ、およそ9000万人の犠牲者が見込まれるとの報告がありました。核廃絶や国の安全保障というと政府の専権事項のように感じ、民間の私たちにとって別世界の話のように思いがちです。しかし、科学に基づいた具体的な根拠を示すことで、核兵器が必要と訴える国も耳を傾けざるを得なくなるでしょうし、民間の人々も他人事では済まされなくなるはずです。私たち宗教者には、こうした実状を強く訴え、世論喚起していく使命があると感じました。

二つ目として、被害者の援助と環境の修復に関する議論がより深まった点が挙げられます。今回の会議には、広島や長崎のみならず、南太平洋やカザフスタンなどからも被曝者が参加し、核実験による被曝の実相を積極的に語りました。特に、南オーストラリア州の先住民が訴えた、「核実験だけでなく、ウランの採掘場で働く人々の被曝の実態を理解しなければならない」との発言が印象的でした。被ばく者といえば、戦争や核実験で被害を受けた人々と考えていましたが、それ以前の核が作られる段階でも、ウランの採掘や加工に携わる人々の悲惨な被曝の実態があることを初めて認識できました。

同時に、被ばくというと、過去の歴史的な一こまとして切り取られた悲劇的な出来事と捉えがちですが、地球上で初めて原爆が使われてから今日に至るまで、南太平洋諸国では核が現在進行形の新たな苦を与え続けているのだと理解しました。信仰者として、今なお被害を受け続けている人々に救いの手を差し伸べさせていただく菩薩の心を忘れずにいたいと感じました。

第三の点は、核兵器によって国家の安全を保つという「安全保障ドクトリン」や「核抑止政策」の誤りについて活発な討議が行われたことです。会議の最後に採択された「宣言」でも、改めて、核兵器が平和と安全に必須であるという核抑止論者の主張を理論的に論破し、核兵器は強要や脅迫、緊張を高める道具として使われていると反論するとともに、核抑止政策を強く批判しています。2025年3月に開催が予定されている第3回締約国会議に向け、今後2年間で核抑止政策が明確に間違いであることがより一層証明され、その報告が次の会議に持ち込まれることは明らかです。

前回の会議に引き続き、NATO(北大西洋条約機構)加盟国のドイツ、ノルウェー、ベルギーなどがオブザーバーとして出席し、ドイツに至っては反TPNWの姿勢を表明しながらも、対話の門戸を開いています。しかし、残念ながら、日本政府は今回も参加しませんでした。次回の会議でさらに核抑止政策や核の傘の間違いについての積極的な議論が行われることを考えると、日本政府はますますこの条約や締約国会議を避けて通れなくなっていくと思います。

サイドイベントで発言する神谷氏(写真提供=WCRP/RfP日本委)

今回、締約国会議とサイドイベントに参加し、核が存在していることで、今も新たな被ばく者を生み出し続けているという、現実の問題として捉えていく視点を持つ大切さを今一度、強く実感しました。また、立正佼成会の庭野日鑛会長は以前、仏教の平和観についての「ご指導」(本紙2002年11月15日付)の中で、仏教では人間は誰もが「貪(とん)・瞋(じん)・痴(ち)」を持ち合わせ、自分は絶対に正しいという立場はあり得ず、何か事が起きた時には自分にも非がなかったかを内省する大切さを説いている、と述べられています。そして、「自分こそ世界の平和を乱す元凶である」と内省--いわば自己否定できる真の謙虚さ、サンゲが不可欠になると説かれました。この「ご指導」をかみしめると、核の傘に守られ続けているということは、核が生み出す新たな犠牲に、私たちも間接的に加担しているとも受けとめられると感じました。こうした「知らず識(し)らずのうちに犯している罪」は仏教ではとても重いものであり、そうした意識を持つことで、核を巡る世界の現状は決して他人事ではなくなっていくはずです。

今年は庭野日敬開祖が入寂(にゅうじゃく)されてから四半世紀。私自身、本会の会員として、こうしたタイミングで、WCRP発足の原点とも言える、開祖さまが核廃絶にかけた深い願いや思いを振り返ることも重要だと感じています。そして、WCRP日本委員会として引き続き、核兵器禁止条約に署名、批准せず、対話の窓口さえ閉ざすような行動を取っている日本政府に対して、オブザーバー参加と核抑止政策の信憑性の再検証を訴え続け、核なき世界の実現に向け、さらなる努力を重ねていきます。