「発達障害啓発週間」特集 誤解や偏見をなくし、共に生きる社会へ(2)上
障害を受容し、前向きに歩き始めたわが子
2人が中学2年生の頃、発達障害への社会の関心が高まり、メディアに取り上げられ始める。ある日、発達障害のテレビ番組を見ていた恭二さんは「自分に似ている」と興味を持ち、インターネットで情報を集め、当事者の手記などを読むようになった。「自分と同じように悩んでいる人がいると分かったのは、彼にとって大きかったと思う」と橋爪さんは話す。
さらに、冒頭のように診断を受けたのを機に、恭二さんは、次の行動に移る際に丹念に手を洗う習慣、入浴の順番や布団を敷く位置へのこだわりなどが「自分の身勝手ではない」と思え、気持ちが楽になったという。同時に、「脳の働きによるものだから改善できるかもしれない」と希望を持つこともできた。
以来、「自分ルール」に縛られない方法を模索し始めた。最初に取り組んだのは、厳密に決めていた布団の位置にこだわらない練習。数日間悩んだ末、思い切って位置を変えてみると、次第に気にならなくなった。今も、ルールを減らす努力を地道に続けている。
一方、得意なパソコンを利用して、在宅で仕事を始めた。現在、プログラミングやウェブデザインを手掛ける。さらに、インターネットを介して同じ障害のある人とつながり、交友関係を広げている。そうした変化に触れ、橋爪さんは、障害を本人が受け入れ、家族が見守っていく大切さを教えられたと話す。
「この子たちがいるおかげで私たち家族は成長できましたし、兄弟の絆も強くなりました。普通、発達障害はプラスとは思われませんが、プラスに変えていくのは私次第だということも、支えてくれた方々に教えて頂いてきました。今まで自分が悩んできたことも、振り返ると有り難い経験だったと笑って言えることを、今まさに発達障害児の子育てに悩んでいる方にお伝えしたいと思っています」
橋爪さんは、今、PTAや地域での活動を通じて知り合った、発達障害児を持つ母親たちの心に寄り添う日々を送っている。