核兵器禁止条約第1回締約国会議に参加して 神谷昌道ACRPシニアアドバイザーら代表団メンバーに聞く

会議ではオーストリア外務省のアレクサンダー・クメント核軍縮担当部長が議長を務め、核なき世界の実現に向けた決意を記した「宣言」や「行動計画」などが採択された(写真は全て、同日本委提供)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会は6月16日から25日まで、オーストリア・ウィーンで開催された核兵器禁止条約の第1回締約国会議(21~23日)に代表団を派遣した。「ストップ!核依存タスクフォース」メンバーの神谷昌道アジア宗教者平和会議(ACRP)シニアアドバイザー、同日本委事務局の橋本高志平和推進副部長と村山浩代スタッフが現地を訪れ、締約国会議へのオブザーバー参加に加え、同会議に先立ち開かれたオーストリア政府主催の「核兵器の非人道性に関する国際会議」(同20日)と、国際NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)による「核禁フォーラム」(同18、19の両日)に出席した。神谷ACRPシニアアドバイザー、橋本、村山両スタッフに所感を聞いた。

ロシアのウクライナ侵攻で世界情勢が急変 核兵器使用の危機感と切迫感が迫った中での会議に

締約国会議は、核兵器禁止条約が発効(2021年1月22日)して1年以内に開くことが条文で定められています。今回、新型コロナウイルスの世界的な流行で二度の延期を余儀なくされましたが、無事に会議が開催され、条約に盛り込まれた内容が効果的に実行されるための、いくつかの重要な「決定」、「核なき世界」の実現を目指す「宣言」、そして具体的な取り組みをまとめた「行動計画」が採択されました。核兵器廃絶に向けてのさらなるモメンタム(勢い)も生まれ、新たな一歩を踏み出したと実感しました。

神谷ACRPシニアアドバイザー

一方、会議が延期されていた間に、ロシアがウクライナに軍事侵攻し、プーチン大統領が核兵器の使用を示唆する発言をしました。世界情勢の急変を受け、締約国の代表やオブザーバーは今まで以上に、核兵器の使用が目前に迫っているという危機感と切迫感を持って会議に臨んでいました。

締約国会議には、核禁条約に批准していない約30のオブザーバー国を含む80を超える国と地域が参加していました。この中にはNATO(北大西洋条約機構)加盟国のドイツ、ベルギー、オランダ、ノルウェーや、日本と同じ米国の「核の傘」の下にいるオーストラリアがオブザーバーとして出席しています。会議の中でドイツの代表は、核禁条約はNATOの考えと一致しないとの見解を表明しながらも、条約の締約国と建設的な対話を重ね、協力していくことが重要と発言しました。日本政府は「唯一の戦争被爆国」として核兵器保有国と非保有国の「橋渡し」を担うと公言しているにもかかわらず、両者の声に耳を傾けるべく同会議に参加しないばかりか、対話の姿勢すら示せなかったことは、とても残念です。

一方で、日本から多くの若者がウィーンを訪れ、ワークショップやフォーラムでのスピーチを通して市民社会の声を積極的に届けていました。こうした取り組みは現地でも高く評価され、私自身、核兵器廃絶への願いが若い世代に継承されていると感じ、彼らから活力と勇気をもらいました。

【次ページ:「非人道性」と「核のリスク」に着目し、核の脅威の全体像と捉えることが重要】