ACRP 第9回「ACRP東京大会」宣言文(全文)
我々のアジアヘの再確認
東京大会は、集中的な議論を経て、豊かな宗教的・文化的遺産を持つアジアが、前述の課題とさらには脅威に立ち向かう準備ができていることを確認した。アジアの人々は、違いや多様性を深く尊重し、多元的な考え方を十分に大切にし、我々の中に家族のような感覚を共有していることに気づくこととなった。そして、人間の心に共鳴を呼び起こし、お互いに分かち合い、思いやることで一つになろうとするアジアの霊性を誇りに思っている。このため、アジアの美しさは、人間関係や自然との共存において、慈悲心、忍耐力、寛容さ、一体感、包容力といった言葉に象徴される。
東京大会は、ACRPを具体的な行動へと進化させる歴史的な転機となった。それに加え、東京大会は、1)人身取引、2)あらゆる生命の尊厳に関する教育、3)紛争の解決と和解、4)開発と環境、5)青年のリーダーシップの向上、などの優先プロジェクトで構成されるACRPのフラッグシップ・プロジェクトを紹介する場にもなった。ACRPの献身的なメンバーが語る成功物語や困難な経験談は、大会参加者に対して、我々のアジアを、すべての人々にとって、より包括的で、健全で、豊かで平和な居住地へと変革することを提唱するモチベーションを与えた。私たちはまた、さまざまなプログラムやプロジェクトの実施に向けて、言葉だけではなく、行動していくべきであることを確信した。
振り返ってみると、東京大会の準備は、2015年に国連で採択されて広く知られている「持続可能な開発目標(SDGs)」に由来する1つの重要な原則から始まった。それは、“誰一人取り残さない。”である。“包摂的”という言葉は、この原則に由来する4つの分科会のサブテーマに含まれている。東京大会では、基調講演や全体会議、分科会での議論が建設的に活かされ、より良いアジアに貢献するための原動力となる方法や手段が示される場となった。
4つの分科会のテーマは、(a)平和と人間の尊厳のための教育、(b)弱者のための人権と福祉、(c)朝鮮半島とミャンマーの状況を踏まえた社会的一致のための和解、(d)多様化する社会における開発と環境、である。アフガニスタンについてのセッションは会議直前で遅れて準備され、同国に留(とど)まっている日本のNGO関係者からの情報をもとに議論した。
我々、東京大会の参加者は、ACRPが地域、国、地方レベルで平和のために活動している多宗教間組織であること、平和、宗教的調和、コミュニティの結束のために、アジア太平洋地域の信仰の伝統や宗教コミュニティの間での共通行動を促進していることをここに再確認する。これがACRPの特徴である。ACRPの活動を通じて、アジアの多様な宗教コミュニティは、あらゆる生命の尊厳の促進、公正で調和のとれた社会の構築、持続可能な開発目標の推進により、平和と和解をはじめ「深く浸透し、広く共有された」道徳的価値を見出している。ACRPは、このような精神的・道徳的な理想を具体的な行動に移していきたいと考えている。アジア各地の宗教コミュニティのメンバーとして、我々は、草の根での共同体への取り組み、霊性的・倫理的・宗教的な境界を越えて働く能力に基づいて、アジアにおける平和の促進と実現に比類のない貢献をしている。
女性事前大会では、女性は変化の担い手であるが、ジェンダー不平等、経済的不公正、人権侵害などの課題に直面していることが強調された。これらの課題を克服するための具体的なステップとして、男女すべてにジェンダーの権利に関する教育を行い、社会や政府のすべての階層で正義に対する意識の向上と能力開発を行うことが挙げられた。ここには、ソーシャルメディア・プラットフォームの規制された使用も含まれている。
ACRPは、我々が直面している問題に対処する上で若者が果たす重要な役割を評価するとともに、彼らが我々のミッションの重要なパートナーであると考えている。我々は、継続して若者を励まし、力を与え、我々の活動に参加してもらうことを約束する。我々は、若者が参加するためのプラットフォームを作り、彼らのプロジェクトやプログラムをサポートすることを約束する。
東京大会は、これまでの具体的な活動の成果を再確認する場であることを踏まえ、フラッグシップ・プロジェクト、COVID-19、アジアの宗教コミュニティについて、ひらめきに満ちた意見交換を行った。例えば、我々の活動の背景には我々のアジアの霊性が存在している。何時パラダイムシフトが起きても、信仰コミュニティの人々は弱者や傷ついた人たちに適切な支援を行うため、その変化に対応することができる。また、アフガニスタン、ミャンマー及び2つのコリアのように困難を抱える国で生活している人々の声を聞き、それにより、これらの国々での人道支援の実施に向けた努力を強化することを再確認した。