東日本大震災から10年 本会一食平和基金と連携し福島を支援したNPO法人「福伝」の代表に聞く
東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年が経過した。福島県では現在も3万人以上が県内外に避難する。立正佼成会一食(いちじき)平和基金は2014年から、地域のニーズに沿って支援活動にあたる市民団体に資金を助成。これまで36団体に4980万円を拠出した。同基金と連携し、助成先の選定や現地でのコーディネートを担ってきたのはNPO法人「ふくしま地球市民発伝所」(福伝)だ。その立ち上げから今日までの活動を二人三脚で牽引(けんいん)してきた竹内俊之代表理事と藤岡恵美子事務局長に、福島の現状と課題、活動の歩みを聞いた。なお、福伝の活動は年内で終了することが決まっている。(本文敬称略)
地域のニーズから生まれた市民団体の活動をサポート
現在も避難者の帰還に向けて住宅再建やインフラ整備などが進められていますが、旧避難区域での居住率は3割程度で、多くが高齢者です。若い世代は放射能の影響や子供の進学などを理由に避難先に定住する傾向にあります。たとえ今後、避難指示が全面解除されたとしても、町の様子は以前と大きく違っています。事故前の故郷は永遠に戻らない――それを避難された皆さんも感じているようです。
けれど、誰も納得したくないのです。そして、その中から「故郷を取り戻したい」という願いを強く持った避難者や住民たちが立ち上がってきました。生まれ育った故郷の生活や文化、豊かな自然を後世に伝える取り組み、避難先での生活支援など、さまざまな活動を行う市民団体がこの10年間で生まれました。
私と藤岡は2014年に「福伝」を立ち上げ、そうした市民団体の方々とネットワークをつなぎながら、『福島で起きたことを世界に伝える』をミッションとして、原発事故の教訓をまとめた冊子『福島10の教訓』の製作や普及、原発事故経験者を海外に派遣して講演会を行うなど、さまざまな活動を行いました。
藤岡:立正佼成会の一食平和基金から、福島での共同事業の話を頂いたのはその頃です。当時は、多くの住民が目に見えない放射能におびえる生活を送っていました。さらに、被害者であるにもかかわらず、「福島」と付くだけでいじめや差別的な扱いに遭い、風評被害もひどい状況でした。
私たちは一食平和基金から委託され、福島が抱えるセンシティブな課題に向き合い、避難者支援や復興事業に取り組む団体に助成してきました。
小規模な団体は運営も厳しく、財政難は存続の危機につながります。初年度から通算で5年間支援したNPO法人「ふくしま30年プロジェクト」は、食品などの放射能を測定し、正確な情報を発信しています。当初は東京から来た人たちで始めた活動を、途中で地元の方が引き継がれたのですが、組織運営に苦労をされていました。一食平和基金の資金助成によって活動を継続し、基盤をつくるサポートができました。
福島は、原発の廃炉から放射性廃棄物の処理、帰還者支援、放射能による健康不安など多くの課題を抱えており、どれも長い時間をかけて取り組まなければなりません。この7年間でたくさんの団体とつながりを持たせて頂いてきましたが、どの方も福島のため、そこに生きる人々のためと、挑戦されていました。一食平和基金との事業を通じて、各団体が細く長く大事な活動を続けていくお手伝いができたことをうれしく思います。
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