〈クローズアップ〉人身売買の根絶に向け、組織を超えて連携を ACRPアジア・太平洋地域女性ネットワークのオンライン会合から

会合では各国の代表者が、人身売買の現状について説明した(「Zoom」の画面)

アジア宗教者平和会議(ACRP)のアジア・太平洋地域女性ネットワーク(APWoFN)は1月14、15の両日、人身売買(人身取引)を根絶するための会合をオンラインで開催した。ACRPから根本信博事務総長、神谷昌道シニアアドバイザー、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会から森脇友紀子女性部会部会長(カトリック東京大司教区アレルヤ会会長)、篠原祥哲事務局長らが参加。延べ220人が視聴した。

人身売買は、暴力や脅迫、誘拐などによって強制的に労働させて搾取する犯罪行為で、強制労働のほか性的搾取、臓器売買、犯罪の強要などが挙げられる。国際労働機関(ILO)の推計によると、その犠牲者は世界で4030万人に上る。

ACRPでは「フラッグシップ・プロジェクト(重点実施事業)」の一つとして、人身取引防止の活動を推進。今回の会合はこの一環で、深刻な現状を学び、啓発を図ってその防止に取り組むことを目的としている。

人身売買の犠牲者は世界で増加傾向にある中、日本にも国際社会から厳しい目が注がれている。米国務省が発表した世界の人身売買に関する昨年の年次報告書で、日本は人身売買の撲滅に向けた取り組みが不十分との評価を受け、4段階の最高ランクから一つ格下げになった。外国人技能実習制度の構造的課題や、制度下で強制労働の告発が挙がっているにもかかわらず、立件されない状況、援助交際や「JKビジネス」といった児童買春の問題などが挙げられた。いずれも、取り締まりや被害者の保護といった取り組みが「本格的でなく、持続性に欠けた」と指摘されている。

あらゆる人の尊厳を守る――求められる宗教者の役割

14日の会合では、同ネットワーク事務局長を務める森脇部会長の開会挨拶に続き、『人身売買に関するスピリチュアルな考察』と題した会議が開かれた。この中で篠原事務局長は、米国務省の年次報告書の指摘に触れながら、人身売買は犯罪に直接関与する人だけでなく、利益を享受する全ての人が「加害者」であると指摘し、あらゆる人の尊厳を守るため、「私たち宗教者の役割が非常に重要」と強調した。

その上で、同日本委の取り組みとして、「人身取引防止タスクフォース」を設置し、学習会などを通して解決に向けた啓発に努めていると報告した。さらに、人身売買では被害者が国境を越えて移動することから、解決には各国の宗教者やNGOなどとの緊密な連携が不可欠と述べ、協力の重要性を訴えた。

2日間の会合では、アジアの宗教者らが各国の現状を説明した。バングラデシュの代表は、新型コロナウイルス感染症の流行により、貧困層がさらなる苦境に置かれ、仕事を求めて強制労働や性的搾取といった被害に遭うケースが増加していると報告。インドネシアの代表は、犠牲者の家族がブローカーに身内を差し出す場合もあると語った。

このほか、各国の代表から深刻な状況が伝えられ、SNSを利用した勧誘活動の実態なども報告された。この問題を解決していくためには、教育機会や雇用の創出、信仰を基盤とした組織(FBO)と人身売買防止に取り組む団体との国際的なネットワークの強化、ウェブサイトやSNSを活用した啓発活動などが重要であることが確認された。