〈クローズアップ〉対話を促進するために必要なこととは WCRP/RfP日本委「ファシリテーター養成セミナー」から

映像を通じて柳田師が瞑想を指導。参加者は、内面的な平和を育む方法を学んだ(写真は「Zoom(ズーム)」の画面から)

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会・和解の教育タスクフォースによる「平和と和解のためのファシリテーター養成セミナー」(第2期)の第1回が7月11、12の両日、オンラインで開催された。

ファシリテーターとは、「調整役」「促進者」と訳され、グループや組織で物事を進める際、中立的な立場から活動が円滑に進むように支援する人のこと。同セミナーは日常生活で生じる問題から国際レベルの紛争まで、さまざまな対立を和解に導く人材の育成を目的とする。今期のテーマは『和解をもたらす人づくり――新型コロナウイルスによる分断から和解へ』。第1回のセミナーを通して参加者は、対話を促進するための第一段階として、「自分の心を見つめる」大切さを学んだ。

まずは自分の心が平和であるように

ファシリテーターとして他者に寄り添うために、なぜ自分自身と向き合うことが必要なのか――その理由について、同タスクフォース運営委員で包括的平和教育や対立解決法を研究する松井ケティ清泉女子大学教授が最初のセッションで説明した。

内面的な平和の大切さを語る松井教授

対立する者同士の間に入っていくには、ファシリテーターの心が安定していなければならない。松井教授は、ファシリテーターは内面的に平和であること(インナーピース)が重要で、インナーピースは自らを愛し、尊重し、ありのままに受け入れることで築くことができると話した。仏教的には、自分で自分を拝むことができてこそ、他者を拝むことができるということになる。

インナーピースの重要性について学んだ参加者はこの後、イエズス会司祭の柳田敏洋師の指導で瞑想(めいそう)により、自らの呼吸や指先の感覚に意識を集中させ、“今この瞬間”を見つめる体験をした。これは自らを受け入れて内なる平和を保つ方法の一つだ。

柳田師が指導したのは、インド最古の瞑想法の一つで、仏教で真理とされる無常・苦・無我を洞察するヴィパッサナー瞑想に、キリスト教の要素を取り入れたもの。ヴィパッサナーとは「現実をはっきり見ること」の意味で、キリスト者である柳田師はこの仏教由来の瞑想を、アガペー(無償の愛・神の愛)を心に育む実践法として信仰生活に取り入れてきた。

柳田師は、ストレスや苦しみの原因は、記憶と想像にすぎない過去や未来の出来事を現実と錯覚してしまうことや、物事や現象を自分なりの見方で捉える「認知の歪(ゆが)み」にあると語った。瞑想を通して、“今この瞬間”をあるがままに受け入れる修練を重ねることで、感情や周囲の状況に“巻き込まれない”心をつくることができると言う。

この日は、呼吸瞑想や歩行瞑想、食べる瞑想など、体の一部に意識を集中させるさまざまな瞑想法が紹介された。いずれの瞑想も、まずは「自分の中に湧き起こってきたネガティブな考えを否定しない」「心に生じた考えの事実としてとらえる」「価値判断をしない」ことが重要で、それにより感情を客観視できるようになる。また、価値判断をしないことによって、人間が本来持つアガペーの心、仏教の慈悲の心に気づき、最終的に全ての存在を無条件に肯定できるようになるとのことだ。「日常生活の中に瞑想を取り入れていくことで自己肯定感が養われ、心の自由と他者への共感力を身につけることができます」と柳田師は話した。

2日間の受講を終えて参加者からは、「和解をもたらす核心は、実は自分にあるのだと知った」との感想が聞かれた。