庭野光祥次代会長に聞く――『宗教協力が育む力』(2)

昨年8月にドイツ・リンダウで行われたWCRP/RfPの第10回世界大会では諸宗教者が市内を行進した。先頭を歩くスタルセット師と光祥次代会長(WCRP/RfP日本委提供)

宗教的信念を持って生きる

――ご依頼すると、どのようなお答えだったのですか

「喜んでご招待をお受けします。行かせて頂きます」というお答えでした。そして、「来年(2020年)には国際活動から身を引こうかと考えていましたが、佼成会への訪問がその締めくくりの活動になることを誇りに思います」とまでおっしゃってくださいました。

ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で、やむなく中止せざるを得なくなり、そのことをお伝えすると、「1年の延期でよければ、来年伺いますよ」とのお返事。開祖さまを尊敬し、佼成会を大事にしてくださっていることがうれしく、ぜひ来年ご講演をお伺いしたいと、今から楽しみにしています。

――報道によると、スタルセット師はノルウェーで難民を雇用され、そのことが法に触れ、罪に問われたようですね

エリトリアからノルウェーに逃れてきた女性が、難民申請をしても何十年も認められず、法律によって働くことができなかったのを見かねたスタルセット師は、難民や移民に対する扱いが非人道的であるとして、違法であることを承知で教会で雇用されたのです。当然、移民法違反となり、スタルセット師は起訴され、45日間の禁錮刑を言い渡されました。スタルセット師は罪になることを承知の上で、人道的観点から自らの信念を貫き、女性に仕事を与え、難民を不安定な状態のままに留め置く法律や社会の問題を人々に問うことにしたようです。裁判では、判決を甘んじて受け入れ、自身の行動について「後悔はない」と語ったと報道されています。

スタルセット師の行動はノルウェー社会に波紋を呼びました。国教会の司教であった方の勇気ある行動は国民の良心に届き、難民を人道的に扱うための法改正につながりました。

この一連の経緯を伺った時、私は心から「かっこいい!」と思いました。どのような状況でも信仰に忠実で、宗教的信念に基づいて行動する宗教者――「宗教する」とはこういうことだと感じたからです。

また、スタルセット師の行動によって、社会を改善しようとするノルウェーの人々の成熟度にも見習うべきものがあると感じています。
次回に続く