連続講座「パグウォッシュ会議と『非戦』の思想」 TPNWの意義と現状伝え

TPNWが議題の中心になった連続講座「パグウォッシュ会議と『非戦』の思想」の第4回。

『「核なき世界」と「非戦」の理想』をテーマにした連続講座「パグウォッシュ会議と『非戦』の思想」の第4回が9月29日、京都市内で行われた(ニュース既報)。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)など4団体の共催によるもので、今回は、2017年に国連で採択された核兵器禁止条約の意義を改めて確認するとともに、核兵器廃絶に向けた道筋が模索された。

東西冷戦が激しさを増し、核戦争の危機が現実味を帯びていた1955年、アインシュタインをはじめ11人の科学者らがロンドンに集まり、核戦争がもたらす悲劇的な結末について話し合った。この時に発表されたのが、「核兵器廃絶」と「戦争の廃止」を二本柱とする「ラッセル・アインシュタイン宣言」だ。

この宣言が原点となり、カナダのパグウォッシュで世界の科学者による「科学と国際問題に関する会議」(パグウォッシュ会議)が開催され、核兵器の危険性や科学者の社会的責任について討議された。同会議はその後も継続して開かれ、組織化されて世界各地に支部も設立された。核兵器廃絶を目指す長年の活動が認められ、95年にノーベル平和賞を受賞した。

今回の連続講座は日本パグウォッシュ会議が中心となり、昨年6月から実施されているもので、「ラッセル・アインシュタイン宣言」を基に、「核のない世界」の実現に向け、科学者や市民が討議を重ねている。WCRP/RfP日本委員会も宗教者の立場から講座の運営に参画している。

講座の冒頭、あいさつに立った同委員会核兵器禁止条約批准タスクフォースの神谷昌道氏は、70年に開かれたWCRP/RfPの第1回世界大会の基調講演で、日本パグウォッシュ会議の創設者の一人である湯川秀樹氏(物理学者、ノーベル賞受賞)が「戦争のない世界に向かっての飛躍は、政治家や科学者だけでは成し遂げられない」と述べ、宗教者の一層の協力を促したことを振り返った。

その後、講座では核兵器禁止条約(TPNW)に焦点が当てられ、議論が深められた。核不拡散条約(NPT)をはじめ、従来の核軍縮に関する国際法は、核保有国の存在を許し、結果として核兵器を含む包括的な軍縮は進んでこなかった。これに対し、2年前、国連で122カ国の賛成により採択されたTPNWは核兵器の全面的な禁止が特徴で、核廃絶への大きな転換点となる。

講演者の黒澤満大阪女学院大学教授(日本軍縮学会初代会長)は、核保有国や日本など核抑止に依存している国が条約に賛同していないことを課題としながらも、「TPNWによって、核保有国に核廃絶に向けた圧力を掛けられる可能性がある」と、条約の意義を指摘した。

条約の発効には50カ国以上で批准が必要だが、批准国は32カ国にとどまっている。

川崎氏(左)、黒澤氏

同条約の成立に尽力し、ノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の川崎哲国際運営委員は、講演の中でそうした現状を伝え、早期の条約発効を訴えた。川崎氏は、核兵器の製造に関わる企業への投資を停止するよう世界の金融機関に働き掛けるなど、国際的な規模で意識を喚起する同団体の活動を紹介した。

さらに、広島、長崎の被爆者が始めた「ヒバクシャ国際署名」には、世界中から1000万を超える署名が集まっていることを報告。このほか、「国境を越えて連帯し、核兵器廃絶への道を切り開こう」との広島、長崎両市の呼び掛けに賛同する都市(自治体)で構成される「平和首長会議」には、163の国や地域から7833都市が加盟していると語った。

現在、世界で保有されている核兵器が全て使用されれば、人類が一度や二度絶滅するだけでは済まない。核兵器廃絶は全人類の問題である。同講座では、核兵器を取り巻く課題は市民一人ひとりの問題であることが改めて浮き彫りになった。その意識は確実に世界で共有されているが、核兵器廃絶に向け、さらに協力の輪を広げていかなければならない。