特集・福島の現状と復興の展望 WCRP/RfP日本委「2019新春学習会」から

市民をつなぐコミュニティー基金

一般財団法人「ふくしま百年基金」 山﨑庸貴代表理事

山﨑氏

福島県では、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響が、現在進行形で続いています。復興への課題が山積する中、これから注目すべきはNPOの存在だと考えています。

県内には現在、コンビニエンスストアの店舗数よりも多い920のNPOがあります。その全てが震災復興に取り組んでいるわけではありませんが、相当数の団体が復興支援として震災後に立ち上がり、さまざまな課題と向き合っています。

しかし、2011年に1兆2000億円ほどあった復興庁の予算は、翌年にはその4分の1程度の3500億円にまで激減し、年々、減り続けています。これまでの8年は復興庁の予算に支えられてきましたが、2年後には復興庁が廃止される予定です。NGOや宗教団体など多くの方々が浄財をお寄せくださったものの、そうした全ての原資は永続的ではありません。復興支援に取り組むNPOの活動を、これから先も持続的なものにするため、今、各団体を資金的に支えていく仕組みを考えなければならない局面にきています。

外部環境に左右されずに、復興支援活動の継続、発展を目指すためには、突破口となる新しいアイデアが必要です。そうした思いから昨年4月、「地域の魅力や課題を知り、できることを考えたい市民」と、「地域のために活動したい市民」、「資金を提供したい市民」をつなぎ、市民同士が支え合うコミュニティー基金として、「ふくしま百年基金」を設立しました。

基金の設立にあたり、県内の全59市町村を回り、福島の素晴らしいところや100年後の未来などについて、住民と対話を重ねました。皆さんの意見に耳を傾ける中で、震災から8年が経とうとしている今だからこそ、復興のために行動を起こしたいと考えている市民が増えてきていると実感しています。ふくしま百年基金により、広い意味での寄付や浄財を基にしながらさまざまな活動を支えていく――市民による市民のための仕組みを、ようやく福島県内につくることができました。

ふくしま百年基金では新たな挑戦として、昨年8月から県内の経済都市として知られる郡山市を中心に、「スモールスタート支援事業」を開始しました。この事業は、市民一人ひとりが身近なところで直面している地域課題に自発的に取り組んでいる活動を援助するものです。福島をより良くしていきたいという皆さんの思いが込められた浄財や寄付といった原資を基に、市民が行う活動を公募し、採択した取り組みに対し、アドバイスや資金援助しています。

福島の復興には、まだ時間がかかります。ふくしま百年基金ではこれからも、100年後も豊かなふるさとを目指し、福島県民が身近なところで取り組む活動を真摯(しんし)に支えていきたいと思います。

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