日本の看取りを考える全国大会 死の尊厳を見つめて 映画『みとりし』に主演の榎木孝明氏が講演
続いて、『あなたは誰に看取られたいですか』をテーマにシンポジウムが開かれた。パネリストとして映画プロデューサーの嶋田豪氏、株式会社船井本社代表取締役の舩井勝仁氏、元小学校校長の田之上誠文氏、看取り士の資格を持つ在宅診療医の泉山典子氏、看取り士の清水直美氏、柴田氏が登壇。大分県別府市総合政策アドバイザーの奥健一郎氏が座長を務めた。人生の最後や「看取り」について、それぞれが意見を述べた。
この中で舩井氏は、団塊の世代が後期高齢者になり、全人口のうちの後期高齢者の割合が急激に増加する「2025年問題」に言及し、「これからは、病院のベッドが足りなくて、病院で死ぬことがぜいたくな時代になる」との見解を示した。自らは妻に看取ってもらいたいと述べる一方で、科学技術の進歩により、AI(人工知能)のロボットに看取られる時代が来るかもしれないとし、そのような時代だからこそ、自分の思う人間らしい最期を迎えるためにも「人間としてなぜ生まれてきたのか」「いかに生きるか、いかに死ぬか」という哲学や死生観を一人ひとりが確立すべきと強調した。
田之上氏は校長を務めた学校で、助産師による「いのちの教育」を行う中で、「誕生」だけでなく、「死」についても教えることが必要であると実感した経緯を紹介。人生には「死」というゴールがあり、いのちは有限であると示すことで、子供たちは一日一日を大事にし、他人の生き方にも考えが及ぶようになると述べた。こうした教育は自身やクラスメートのいのちを考えるきっかけになり、学校が抱えるいじめや不登校の問題にも有効だと語った。
柴田氏は、「病院死」が一般的になる中で、自身が「在宅死」を望み、娘に看取ってほしいと伝えたところ、拒まれた体験を披歴。自分と同じような思いを抱える人が、自分の望む場所で最期を迎えられる手伝いをしたいと願い、「日本看取り士会」を設立したと動機を紹介した。
また、日本看取り士会会長として、「全ての人が愛されていると感じて旅立てる社会を創ること」が願いであると述べ、最期の瞬間に見守られることで、逝く人自身が人生を肯定して終えられると述べた。「人の手のぬくもりは愛を伝え、ほほ笑みは相手を癒やします。誕生した時と同じように家族の愛があふれる中で旅立ちを見守ってあげてほしい」と、会場の参加者に語り掛けた。