ドライバーに捧げる「六波羅蜜」

〈3〉忍辱(にんにく) 「名ドライバーの魅力を生み出す条件」

車を運転していると、実に多くの人々との出会いがあります。気持ちよく道を譲ってくれるような思いやりのある人ばかりではありません。中には、車の前に急に割り込んだり、猛スピードで追い抜いたり、道を譲ってもあいさつひとつしない人までいます。そんな車を目にした時、あなたならどうしますか。

  • 『三車線の道路で、一番左側から一番右側まで強引に車線変更する車。車線変更しようと、いきなりハンドルを切り、車体を割り込ませる車。そうした車に、月に数回は急ブレーキをかけます。待ち合わせや仕事先へ急いでいる時など腹が立って我慢なりません。いきおい、前方の車との車間距離を短くして割り込ませないようにしてしまいます』(H.Yさん・28歳・男性)

無謀な車、失礼なドライバーに出会って、つい腹を立てるのは人間として素朴な感情なのかもしれません。しかし、そこでぐっとこらえる。それが「忍辱」だと仏教では教えています。心を広く持って、人の過失を許し、他人の言動を善意に受けとめられる心になれば、そこに救いが生まれてきます。さまざまな悪条件を、自らを高めてくれる糧と受け取るのです。猛スピードで追い抜いていった車を見て「ああ、きっと急ぎの用事があるんだろうなあ。大変だなあ」。そう考えるだけで腹立ちもスッと収まってきます。

  • 『私が30年以上も無事故でこられたのも、相手に左右されずマイペースで安全運転に心がけてきたからだと思います。追い越そうというより、いつも「お先にどうぞ」という気持ちで運転してきました』(S.Kさん・61歳・男性)

寛容の心をいつも持ちながらドライブしていきましょう。優しい気持ちでドライブしていきましょう。それが、名ドライバーの魅力を生み出す条件です。

【次ページ:〈4〉精進 「ドライブから豊かな心を養う秘けつ」】