ドライバーに捧げる「六波羅蜜」

〈4〉精進(しょうじん) 「ドライブから豊かな心を養う秘けつ」

  • 『ノロノロ、フラフラして走ってるんですね、前の車が。「道でも間違えたのかしら」なんてイライラしてたんです。私はバイクに乗ってたんですが、前の車、方向指示器も出さず急に左折したんです。そこで車と衝突して2カ月入院の重傷。後で、そのドライバーの話を聞いたんですが、心配事で頭がいっぱいだったとのことでした』(M.Rさん・43歳・女性)
  • 『ある年の大みそか、母から急に「初詣りに連れて行って」と頼まれまして。まだおせち料理の準備をしている最中でしたから、イライラするままハンドルを握りました。そして十字路で接触事故を起こして母が入院。心臓が止まるかと思うほど怖い体験でした』(N.Nさん・46歳・女性)

事故を起こしたくない、事故に巻き込まれたくない。それはドライバー誰しもの願いですが、出がけに夫婦げんかをしたり、心配事があったりすると、ハンドルを握りながらも頭の中は怒りや不安でいっぱいになってしまいます。気もそぞろでは、安全運転などとても望めません。

これまで、ドライバーにとっての必要不可欠な条件として「布施」「持戒」「忍辱」の教えを紹介してきました。しかし、大切なのは、これらの教えを理解することではありません。「布施」「持戒」「忍辱」の三つを実践させてもらおうと一日一日心に誓い、一心不乱に努力していくことなのです。余計なことに心を奪われないことなのです。これが「六波羅蜜」の中の「精進」です。

そして、この「精進」は、安全運転に最も大切なばかりか、ドライバー一人ひとりの心をも豊かに養い、自らが生まれ変わる一番の近道と教えられています。

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