ドライバーに捧げる「六波羅蜜」
〈2〉持戒(じかい) 「快適なドライブを生み出すルール」
- 『雨の日の夕方、T字路を左折しようと思い、カーブミラーで確認しようとしたところ対向車が見えなかったので、一時停止の標識を無視してそのまま曲がってしまいました。その時です。すぐ目の前に車が……。とっさに相手の方がよけてくれたので衝突はまぬがれましたが、ひや汗が出ました』(K.Bさん・40歳・女性)
「六波羅蜜」の第二は「持戒」です。戒めを守り、行為を整え、自己を完成させていく教えです。
ドライバーには、道路交通法という「戒め」があります。ところが実際は違反者が続発しています。それは、「戒め」そのものを、ただ一面的に、自己を規制するやっかいなものとしか考えていないからではないでしょうか。
しかし、仏教では、「持戒」を、単に規則の順守とは考えず、自分を生かし、相手をも生かしてくれる、有り難いはからいだと教えています。
例えば、シートベルトひとつとっても、それは身体を守るだけのものではありません。シートベルトをすることによって姿勢が良くなる。姿勢が良くなることによって視界が広がる。胃腸の働きまで良くなると指摘する人もいます。「戒め」を積極的に受けとめることで、私たちはどれほど大きな利益を得られるか分からないのです。
もちろん、だからといって、自分さえルールを守っていれば絶対に事故は起きないというものでもありません。
- 『先日、わき見をしていた車が急に幅寄せをし、それをよけようとして違法駐車の車に追突してしまいました。常に周りの状況を把握し、相手が考えられない運転をすることも頭に入れ、その対応まで考えておく必要があると実感しました』(H.Mさん・24歳・男性)
自分自身だけでなく、家族、友人……一人でも多くの人に「持戒」の教えを実践してもらえるよう心がけていきたいものです。