紛争によって傷ついた世界の友達へ 祈りと真心おくり続けて 20年目迎えた「ゆめポッケ」

「あなたは一人ぼっちじゃない」 “ポッケ”に込められたメッセージ

根本昌廣・時務部主席の談話

根本主席

1994(平成6)年3月、私はクロアチア(旧ユーゴスラビア)に滞在して国際NGO「JEN」(ジェン)のプロジェクトを進めるため関係者と会合を重ねていました。

紛争の真っただ中にあるサラエボの状況が伝わってきました。戦火を逃れた子供たちが避難した地下室でろうそくを灯(とも)して勉強をしているということでした。「子供たちのために何かできないか」。私たちは「日本から文房具を送ってもらい子供たちに届けよう」との意見でまとまりました。JENが旧ユーゴスラビア地域で活動を開始する2カ月前のことでした。

その頃、「難民を助ける会」が「愛のポシェット運動」を主にカンボジアで行っていました。同会とは、「アフリカへ毛布をおくる運動」を通して友好関係にありましたから、私は帰国してすぐ、「愛のポシェット運動」への参画を申し入れると快く了承してくださいました。こうして本会の「ゆめポッケ」の前身となる活動が始まったのです。

同年12月、クロアチアのオシエクという町に初めて“ポッケ”を届けることができました。日本からの贈り物を子供たちが心待ちにしていました。

その後、佼成会独自で活動を行うことになって、会員から名称を募集し、99(平成11)年、「ゆめポッケ・キッズキャンペーン」として新たにスタートしたのです。

配付活動の中で忘れられない思い出があります。ブコバル(クロアチア)という町の教会や学校を訪問して“ポッケ”を手渡すのですが、その時、小学6年生の女の子が作文を読んでくれました。その子は爆撃でお父さんを亡くし、半壊した家でお母さんと妹の3人で暮らしていました。

「私たちのことを思って贈ってくれた素敵(すてき)なプレゼントをありがとうございます。私は今、皆さんに贈り物をすることはできません。でも戦争が終わったら、必ず皆さんのように幸せや夢を届ける人になりたいと思います。なぜなら、幸せは受けるものではなく、与えるものだからです」。彼女の強さと優しさに心が震えました。以来、私にとって一生忘れることのできない言葉になりました。

2014(平成26)年には、名称が「親子で取り組むゆめポッケ」と変更され、親子で取り組む平和活動であることが明確に打ち出されることになりました。

ポシェットをおくる活動が始まった当初は、おくる側も慣れないせいか、何かの記念でもらった品や手拭いなどが入っていたことがありました。彼らを自分の大切な「家族」「友達」と思い、「もらってうれしいもの」を届けることの大切さを確認していきました。

今では、文房具のほかにもぬいぐるみや人気のグッズ、さらには優しいメッセージカードを添えて世界に一つしかない“ポッケ”を作ってくださる方が大勢います。

同悲・同苦の心で支える活動が「ゆめポッケ」だと思います。「あなたは一人ぼっちじゃない」。それが“ポッケ”に込められたメッセージです。多くの子供たちにとって一筋の光明、希望のともしびになればと願わずにはいられません。

【次ページ:ゆめポッケを受け取った海外からの声】