バチカンから見た世界
「バチカンから見た世界」(164) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(13)―イスラエルは単独で自国防衛できるのか―
イスラエルのネタニヤフ首相は、同国の司法機関から収賄、詐欺、背任などに関する容疑を追及されている。だが、現政権は昨年7月、「最高裁判所の判断を議会の過半数で否決できる司法制度の見直し」を立法化した。ネタニヤフ首相は、「裁判所による権限乱用を防ぐため」との理由を示して改革を正当化した。
バチカンから見た世界(163) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(12)―ハマスはパレスチナ人の「抵抗理念」であり軍事力で壊滅できない―
イスラエルのネタニヤフ首相は10月17日、パレスチナ自治区で戦闘を続けるイスラーム組織ハマスの最高指導者であるヤヒヤ・シンワル氏の殺害を明かした。同氏は、昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲攻撃の首謀者といわれる人物だ。ネタニヤフ首相は、今年7月に暗殺したハマスの前最高指導者イスマイル・ハニヤ氏を含めて、彼らの死が「ハマスの衰退を告げる重要な節目」と成果を誇示した。
バチカンから見た世界(162) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(11)―恥ずべき国際社会と列強国の無能さ/教皇の糾弾―
ローマ教皇フランシスコ は10月 6日、バチカン広場での日曜日恒例の正午の祈りの機会に、「イスラエルの住民に対する(ハマスによる)攻撃から1年が経過した」と追憶し、「今でも、ガザには多くの拉致された人々が残っている」と心痛を表すとともに、「彼らの即刻なる釈放を要請」した。
バチカンから見た世界(161) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(10)―中東における新秩序を求めて戦争するイスラエル―
パレスチナ領ガザ地区での戦火が、レバノンへと拡大している。イスラエル軍が9月28日、 レバノンのイスラーム・シーア派政治・武装組織ヒズボラの最高指導者ハッサン・ナスララ師を空爆で殺害したと公表したからだ。ヒズボラと、同組織を支援するイランがイスラエルに対する報復を宣言したが、イスラエル軍は10月1日、レバノン南部を空爆するのみならず、国境地帯に戦車を集結させ、同国への限定的な地上作戦を開始したと発表した。
バチカンから見た世界(160) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
G7でスピーチしたイタリアの政界、宗教界の指導者(3)
国連総会(193カ国)は7月1日、AI(人工知能)の開発や利用に関する先進国と開発途上国の間にある情報格差の解消に向けて、国際協力を推進していく決議案を無投票で採択した。国連総会は、3月にも各国にAIの安全性を求める決議案を日米主導で採択している。
バチカンから見た世界(159) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
G7でスピーチしたイタリアの政界、宗教界の指導者(2)
ローマ教皇フランシスコは6月14日、イタリア南部プーリア州で同国を議長国として開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)に、歴代教皇として初めて参加し、アフリカ、南米諸国、インドの首脳をも含む拡大会議で人工知能(AI)についてスピーチした。
バチカンから見た世界(158) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
G7でスピーチしたイタリアの政界、宗教界の指導者(1)
イタリア南部プーリア州で6月13日から15日まで、同国を議長国とする主要7カ国(G7)首脳会議が開催された。この中で、イタリア国民から圧倒的に支持される政治、宗教の指導者がそれぞれスピーチした。セルジョ・マッタレッラ大統領と、ローマ司教であるローマ教皇フランシスコだ。両指導者とも、キリスト教の世界観をビジョンとし、欧州統一思想や、国際法の順守される世界を訴え続けている。
バチカンから見た世界(157) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(9)―ガザ紛争に揺れ動くバチカン、イスラエルとユダヤ教徒の関係―
中世期まで、ユダヤ教徒たちは神であるキリストを殺害した責任を問われ、キリスト教社会から隔離、迫害されてきた。その影響で、カトリック教会では1959年まで、復活祭前のキリストの受難を追憶する聖金曜日の式典で、「神が(神殺しの)悪質なユダヤ教徒たちの心からベールを拭い去り、彼らがキリストを神と認めるように」と、祈りが捧げられていた。
バチカンから見た世界(156) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(8)―戦火ではなく星によって照らされる天地を求める教皇―
イスラエルは4月1日、シリアのダマスカスにあるイラン大使館を爆撃した。公館を攻撃することは、国際法によって禁じられている。その報復として、イランは13日夜から14日にかけて、大量のドローンやミサイルをイスラエルに向けて発射。イランが自国内から直接、イスラエルを攻撃するのは初めてのことだった。
バチカンから見た世界(155) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
教皇が自叙伝を刊行(5)―教皇就任の初期に辞表を書き国務省に提出―
ローマ教皇フランシスコは自叙伝の中で、繰り返し世界平和、労働の価値を擁護し、一方で、武器商人や経済の行き過ぎ(利益優先)を非難している。環境保全に関しては、「時間切れが迫っている。地球を救うための残り時間は少ない」と警鐘を鳴らし、若者たちには、「暴力に訴えず、芸術作品の汚染を避けながらも、騒ぐ(抗議する)ように」と呼びかけている。アッシジの聖フランシスコに倣い、神の創造の業(わざ)としての自然を賛美し、その保全を訴える教皇だが、頻発する有名な芸術作品や歴史的な噴水を汚しての抗議運動は戒めた。