上座部仏教の文化に触れる アーユス仏教国際協力ネットワークが交流会を開催

「スリランカの僧院で、出家する子供たちは両親にひざまずいてあいさつするのですが、僧侶の名前を与えられ、僧侶の黄色い衣に着替えると、今度は在家である両親がひざまずいてあいさつをします。そうした形で在家と出家の明確な区別が示されるのです」

スリランカに在住する真宗大谷派僧侶・横尾明親師はそう話した。6月29日、認定NPO法人「アーユス仏教国際協力ネットワーク」の交流会の席上、同国に根付く上座部仏教の文化や僧侶の生活、儀式の様子などについての講演でのことだ。当日は、宗教者やNPO関係者ら10人が参加した。

横尾師は、2015年からスリランカ国立仏教徒パーリ大学で日本語講師を務める。その傍ら、ライフワークとして週末にコロンボ市内の僧院で修行生活を送る。

スリランカの僧院生活について語る横尾師

講演の中で横尾師は、僧侶は俗世から離れて生活するイメージがあるが、同国では、檀家(だんか)は僧侶への布施を通してのみ功徳を積むことができると認識されていると説明。そのため、食事や生活用品の布施が盛んで、僧侶は社会に溶け込んで生活を送っていると語った。

中でも、特に重要な布施の儀式として、3カ月間にわたる安居(あんご)明けの「カティナ衣法要」を例示。夜通し行われる読経供養の後に、檀家の人々が小さく切った布を縫い合わせ、一枚の衣に仕立てて僧侶に布施する行事で、布をつなぎ合わせて作る日本の袈裟(けさ)の文化に似ていると解説した。

また、アジア諸国出身者も含め、大勢の僧侶が修行生活を送る同国の僧院には、「一日中瞑想(めいそう)をしている僧、檀家のためにピリット(儀礼)のみ行う僧、説法を得意とする僧といったさまざまな信仰観を持つ僧侶が共存している」と報告。僧院が「比丘の多様な生き方を許容している」と語り、日本と異なる修行のあり方を詳述した。