「核にまつわる戦争の不条理――フィリピンの枢機卿」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

写真はバチカンメディア提供

核にまつわる戦争の不条理――フィリピンの枢機卿

米国とイスラエルによるイラン攻撃の目的は、「イスラーム・シーア派の神権・政権の打倒」と「イラン核開発の阻止」であった。

フィリピン・カローカン市のカトリック司教を務めるパブロ・ヴィルジリオ・ダビド枢機卿は、世界の強権国家に対し「自身では世界を破壊する能力を保有しながら、他国に対して核の開発を阻止せよと説教するな」と非難した。「ラジオ・ベリタス・アジア」(RVA)が、3月11日に流したインタビューを通しての発言だった。

「アジア司教協議会連盟」(FABC)の副議長も務めるダビド枢機卿は、「強権国家が自身の保有する核兵器を新開発しながら、他国に対して抑制を要求する行為は、核兵器に関する世界秩序を弱める」と主張し、「最も大きな核能力を保有する国々が、世界秩序の定める規則を曲げたり、無視したりする時、国際共同体に何が起きるのか」と問うた。さらに、この視点から、米国によるイランの核開発、ミサイル能力の破壊、同政権のもたらす“緊急的脅威”回避のためのイラン攻撃を批判した。

同枢機卿の言及はないが、イラン攻撃をトランプ大統領に示唆したと憶測されている、ネタニヤフ首相率いるイスラエルが、核保有国と見なされていることも忘れてはなるまい。米・イスラエルによるイラン攻撃は、本質的に「不条理な戦争」(double standards)なのだ。

フィリピンのダビド枢機卿は、「核拡散防止条約」(NPT)などによって、ここ数十年間、核保有国の間においても核軍縮へ向けての道程がたどられていたことを評価しつつ、米国、ロシア、イスラエルなどが国際法や多国間主義を無視し、自国第一主義を主張するために核兵器とその威嚇や優越性を使用することを糾弾しているのだ。中東における核にまつわる戦争は、その全域を「非核地帯」にしない限り、無くならない。米国は1946年から58年にかけて、マーシャル諸島で、知られているだけでも計67回の核実験を実行し、住民の被ばくや回帰不可の環境破壊といった長期間にわたる深刻な被害をもたらした。

スイス・ジュネーブにある国際・開発研究大学院の「平和の家」(メゾン・デ・ラ・ペ)で3月6日、マーシャル諸島共和国の国連欧州本部常駐代表部、スイスのコー・イノベーション財団(国際NGO)、世界教会協議会(WCC)の共催する、「マーシャル諸島核実験犠牲者の追悼式典」が執り行われた。スピーチに立ったマーシャル共和国のドレーン・デ・ブルム大使は、「私たちは、マーシャル諸島がかつて、平和、豊穣(ほうじょう)、先祖代々の土地であったことを知っていたが、その土地が想像もできない破壊をもたらす兵器の実験の場となった」と前置きしながら、「多くの生命が、われわれの浜辺のはるか彼方(かなた)、そして、われわれの管理の行き届かない、さらに遠い場所において、世界的な政治勢力(米国)がわれわれに強要した決断によって、回復できないほど害された」と糾弾した。

WCCの人権と軍縮に関する執行委員会のジェニファー・フィルポット・ニッセン氏は、「核実験記録の完全公開を通して、マーシャル諸島の住民、環境、水域に対する害に関しての真相が認知されるように」と願いながらも、核実験によって健康を害されたり、生活のすべを失ったりして、米国へ移住せざるを得なくなった住民たちが、トランプ政権の目玉政策である「移民の大量送還」におびえ、外出さえも控えている状況を指摘。自国第一主義の、自国の歴史を忘れた不正義、不条理な、マーシャル諸島住民に対する扱いを非難した。

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