LGBTの雇用と人権をテーマに、就職差別撤廃の集会が東京で
就職差別撤廃東京集会実行委員会は6月13日、東京・台東区の浅草公会堂で、『セクシャル・マイノリティの雇用と人権』と題する集会を開催した。行政機関や企業、労働組合などから650人が参加した。
同集会は、1998年に大阪市の興信所が大企業の依頼を受け、就職希望者の身元調査をしていたのが発覚した事件を機に、あらゆる雇用の場で就職差別をなくすことを目的に毎年実施されてきた。
当日は同実行委員長の炭谷茂氏(社会福祉法人「恩賜財団済生会」理事長)が基調報告に立ち、依然として続く被差別部落出身者への差別の現状について語った。続いて、日本アイ・ビー・エム人事ダイバーシティー企画担当の梅田恵氏が『IBMのLGBTに対する取り組み』をテーマに講演。レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T、性同一性障害当事者など)といった性的少数者を総称する「LGBT」という言葉の普及に伴い、人口の5~7%に上る当事者への理解が進んできた現状に言及した。
この中で梅田氏は、2015年に米国全土で同性婚が認められて以降、日本の自治体で配偶者と同等の権利を同性パートナーにも認める条例の制定が広がり、学校でも当事者児童や学生への対応が始まっていると解説。特に大学では、学生が当事者であることを公表(=カミングアウト)し、団体を結成するといった動きもあり、企業側が、こうした若者が入社してくるという認識を持つ必要性を強調した。
一方、同社では、働きやすさの推進を図るため、社員の多様性を許容する部署を設けてきたが、カミングアウトは本人の意思によることから、当事者の実数を把握できず、対応を始めた04年当時は、「姿が見えない人に対して配慮し、規則を作っていくことは難しかった」と説明。当事者団体との交流を通して、社内のLGBTへの理解を図った経緯を詳述した。
こうした施策の背景として梅田氏は、人権の考慮のみならず、米国の調査では、職場でカミングアウトした後に、仕事の能力が15%程度上昇するとの経営的効果を紹介。パートナーについて周囲にうそをつき続けるストレスが仕事に悪影響を与えるといった問題を例示した。
この上で、同社は、16年1月に、同性パートナーに配偶者と同等の福利厚生を認める「同性パートナー登録制度」を開始し、社内外での啓発セミナー、イベントを開催していることを紹介。「社員が自然にカミングアウトできるような社の風土や制度を整えていきたい」と語った。
この後、『新規学校卒業者を取り巻く採用・選考の現状と課題』『高校生の進路保障の現状と課題』をテーマに、東京労働局職員、都立高校教諭がそれぞれ就職活動の現状を報告した。