プノンペンで仏教・キリスト教対話会議——真理を伝え、癒やし、関係回復のための勇気ある道程へ(海外通信・バチカン支局)

バチカン諸宗教対話省は5月30日、同省がカンボジアのプレアシアヌーク・ラジャ仏教大学、同国のカトリック教会と協力し、首都のプノンペンで開催した「第8回仏教・キリスト教間対話会議」(5月27~29日)の「最終宣言文」をバチカン記者室から公表した。
1995年に台湾で第1回の会議が開催されて以来、同会議はインド、日本、イタリア、タイなどで対話を重ねてきた。今回は『和解と持久性(耐久力)を通して平和のために協調する仏教徒とキリスト教徒』をテーマとし、カンボジア、香港、インド、イタリア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、シンガポール、韓国、スリランカ、台湾、タイ、ベトナム、米国、バチカンなどの国・地域から宗教指導者や専門家など150人と現地の諸宗教者、アジア・カトリック司教会議の代表者らが参加した。カンボジア政府からは、チャイ・ボリン宗教相が出席した。
1980年代に仏教倫理を基盤にカンボジアの和平プロセスに大きな貢献をしたマハ・ゴーサナンダ師(第15回庭野平和賞受賞者)を輩出したカンボジア仏教の地に参集した両宗教の指導者たちは、「両宗教の伝統が慈しみと真理を通して、心と社会の変革を呼びかける」と確信し、「相互の伝統が有する叡智(えいち)を中心に、注意深く耳を傾け合っていった」。「まことに、怨(うら)みは怨みによって消ゆることなし。慈悲によってのみ消ゆるものなり。これは永遠の真実である」(法句経=ほっくぎょう=5番)と「平和を作る人は幸いです。その人たちは神の子と呼ばれるから」(マタイによる福音書5:9)との両宗教の伝統に沿って意見を交換していった参加者たちは、最終宣言文の中で、「和解が真理を伝え、癒やし、関係を回復していく勇気あるプロセスである」との確信を表明している。また、「持久性は、信仰に根を張り、共同体によって支持される内的強靭(きょうじん)さによって涵養(かんよう)される」と主張し、「平和構築のためには、貧困、環境の悪化、社会不正義、人権の否定といった、より深い原因の除去にも挑戦していかなければならない」と注意を促している。「われわれが、慈しみ、勇気、希望を持って、現代世界の課題に対処していくために、双方の宗教伝統が、深い倫理、霊的源泉を提供してくれる」とも表明した。
会議を終えた参加者たちは、各々(おのおの)の共同体に戻っても「友愛、霊的な伴侶として、共に歩む誓いを新たにしていく」「双方の伝統と叡智に対する評価を、より深めていく」「傷ついた世界で平和、癒し、希望の道具となり、問題解決のために協調していく」と誓約している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)