「カンタベリー大主教の引責辞職」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

教皇がガザでの民族虐殺の可能性について調査を要請

イタリアの「ANSA通信」は11月17日、ローマ教皇フランシスコが今年の「聖年」に向けて刊行する書籍『希望は欺かない』の中で、「何人かの専門家によると、ガザで展開されている戦争が、民族虐殺としての性質を持っているとのことだ」と指摘し、「その定義が、法学者や国際機関の定めるテクニカル(専門的)な範疇(はんちゅう)に入るかどうか、注意深く調査されなければならない」と要請していることを報じた。

教皇は昨年11月、バチカンでイスラーム組織ハマスの人質となっているイスラエル人の家族、ガザでの戦争に苦しむパレスチナ人の家族と個別に会った。この時、パレスチナ人のある家族が、「教皇がガザでの戦争を民族虐殺と呼んだ」と発言し、問題となった前例がある。バチカン報道官のマテオ・ブルーニ氏は、パレスチナ人家族の発言を否定したが、いずれにせよ、教皇が、ガザでの戦争が民族虐殺である可能性について国際機関に調査を要請したのは初めてだ。

教皇の発言に関する報道を受けて、在バチカン・イスラエル大使館は即刻、X(旧ツイッター)に「イスラエルの(正当な)自国防衛を他の名前で呼ぶあらゆる試みは、イスラエル国家を孤立させることである」と投稿し、非難した。

『希望は欺かない』は、イタリアの出版社から11月19日に刊行される。教皇は17日、バチカン広場で執り行った日曜恒例の正午の祈りの終わりに、「戦争は非人間化させ、容認できない犯罪へと導き、それを黙認させる」と警告した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)