「“白旗”を掲げて和平交渉を――教皇がウクライナに進言」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

バチカンは、「受精の瞬間に人間生命は誕生するため、中絶は殺人である」という見解を固持している。パリア大司教の声明は、「中絶は、その誕生の瞬間からして生命に対する攻撃」とするフランスカトリック司教会議の見解だけでなく、「中絶を女性の自由という視点だけで判断すること」も非難している。また、「(中絶を拒否して)出産を選択した女性への支援に関する討議の欠如」を指摘し、「世界の全政府と全宗教伝統に対し、この歴史的時点において、平和と社会正義の促進に向けた具体的進展を図ることで生命の擁護を絶対的な優先課題とするよう訴える」と呼びかけた。

そして、「人間生命が特別な状況下(戦争や災害など)に置かれ、現代世界が困難な場面にある現在、(胎児のような)より弱く、より傷つきやすい人たちの擁護を最優先させる法制度の対応が必要」と述べた。

バチカンは、「人間生命の擁護が人類の最初の目標」と主張しており、「人間生命は、紛争や分断のない世界において、人間個人と友愛に奉仕する科学、技術、工業から支援を受けて発展できる」との確信を表明している。また、「生命の擁護は、イデオロギーでなく、人間の現実問題である」と明示し、「(命の文化に対する)連帯、治癒、歓迎の姿勢を次世代に伝えるため、文化、教育分野の活動を続けること」を推奨。「キリスト教徒だけでなく、人類全体にとって、友愛関係を構築し、弱者を含めた全ての人の価値を認めることが大切」とし、人間生命を擁護する考えを拡(ひろ)げている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)