教団付置研究所懇話会 第21回年次大会 変遷する社会の中で宗教の在り方を問う
平和、人権、環境、教育、生命倫理の問題に宗教者はどう向き合うことができるか——。立正佼成会中央学術研究所が加盟する「教団付置研究所懇話会」は2002年、日本社会に「真の宗教性の復権」をもたらすことを願い発足した。以来、宗派教派を超え、現代社会を取り巻く問題について情報交換を行い、日本の宗教者の相互理解と協調・連帯を図ってきた。年次大会の開催、研究部会の活動、会員相互の情報交換を通し、研さんを積んでいる。
『社会の変化と信仰—いま、どこで、何が、どのように問われているか—』をテーマに同懇話会の第21回年次大会が10月31日、岡山・浅口市の金光北ウイングやつなみホールで開かれ、25の研究機関などから74人が参加。本会からは、同研究所の橋本雅史所長、同研究所学術研究室の西康友主幹が出席した。
当日は、金光教の岩﨑道與教務総長、金光教教学研究所の大林浩治所長が挨拶。この後、同教学研究所の須嵜真治所員、宗教情報センター上席研究員の葛西賢太氏、曹洞宗総合研究センター常任研究員の宮地清彦氏、玉光神社宗教心理学研究所の本山一博所長、天台宗総合研究センター主任研究員の勝野隆広氏が個別発表を行った。
この中で、須嵜氏は、明治期の神道金光教会支所に収められた資料を介して浮かび上がった信奉者の救済への願い、地域的特性と信仰の関わりなどを報告。多種多様な市井の人々と信仰との出会いによって現代に受け継がれる教団の歴史、文化が醸成されたと解説した。
葛西氏は、宗教者の傾聴の在り方に言及した。信仰によって相手をケアするには自己理解を進めるとともに他者から学び、他者に敬意を払う姿勢を持つことが重要と強調。宗教的ケアやスピリチュアルケアを学ぶことで、臨床宗教師など宗教者としての新たな展開が望めると述べた。
このほかの発表では、現代社会で宗教界が抱える諸課題についても取り上げられた。勝野氏は同センターが実施した「少子高齢化と寺院運営に関するアンケート」を基に、墓じまいによる檀家(だんか)後継者の減少などを指摘。本山所長は、昨年末から研究部会で議論を重ねてきた旧統一教会問題について、討議内容と結果を報告した。
総会では、同懇話会の概要がインターネット上の百科事典サイト・ウィキペディアで公開されたことが報告された。