『ヤングケアラーの現状と地域での支援』をテーマに全国教会長人権学習会
立正佼成会人権啓発委員会(委員長=和田惠久巳総務部部長)による「全国教会長人権学習会」が9月13日、大聖ホール(東京・杉並区)で開催された。会場には東京教区の教会長や教団役職者らが参集。その他の地域の教会長はオンラインによるライブ配信を通じて参加した。
同学習会は、仏教精神を基盤に、部落差別問題をはじめとした一切の差別の解消を目指すとともに、人権意識の高揚を図るため、毎年開催されている。当日は『ヤングケアラーの現状と地域での支援』と題し、立命館大学産業社会学部の斎藤真緒教授が講演した。
ヤングケアラーとは、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」(こども家庭庁/厚生労働省)と定義される。障害や疾患のある家族の介護や世話のほか、外国にルーツを持つ家族のサポート(通訳)を担う子どもなども含まれる。
斎藤氏は講演の中で、「『ケア』は、自分のことを後回しにして、時間とエネルギーを誰かのために明け渡すこと」と強調。特にヤングケアラーは、与えられた役割をこなすのに精いっぱいで、社会で自立し、よりよく生きるために必要な力(ライフスキル)を身につける機会が失われると指摘した。また、責任感の強い子どもほど「ケア」を生活の一部として受け入れてしまい、自らの人生と切り離して考えられず、夢を諦めたり、具体的な目標を思い描けなくなったりして「生活や将来が支配されてしまう」との問題点を挙げた。
また、ヤングケアラーの6割以上が他人に相談できずにいるとの調査結果を報告。日本には「家族は助け合うもの」「家族が世話をするのは当たり前」といった社会規範が根強いことなどを挙げ、当事者がつらさを抱え込んでしまう心理について見解を示した。
その上で斎藤氏は、今、ヤングケアラーの支援として求められているのは、家庭や学校とは違う第三の居場所を提供することであると明示。当事者の夢や希望に耳を傾ける大人の役割が欠かせないとして、「自分の夢のために、ブレーキを踏まなくていいんだよ。アクセルを踏み続けていいんだよ」と伝える必要があると話した。さらに、近年、全国的に広がりを見せている子ども食堂などと同様に、地域社会と接点を持つ宗教団体もそうした役割を担う可能性を秘めていると述べ、さまざまなバックグラウンド、多様な価値観を持つ人々が集い、交流する布教拠点を各地に持つ本会に期待を寄せた。