第40回庭野平和賞 受賞者ラジャゴパール P.V.氏 記念講演
これまで4項目のアプローチについてお話しさせて頂きましたが、平和構築の方法としての非暴力の効果に対して懐疑的な人が多いことも承知しております。このような人に対して申し上げたいのは、歴史の中で英知が私たち人類の進歩につながった重要な瞬間を振り返ることの大切さです。
1931年にアルバート・アインシュタインがマハトマ・ガンディーに送った書簡に次の言葉があります。「暴力を用いずとも暴力の手段を捨てていない人々に勝ることが可能なことを、貴兄はその行動を通して示されました」。それから、彼はあるスピーチの中で、次のように言っています。「ガンディーの見識は今日の政治家のなかで最も啓(ひら)かれたものであったと私は信じます。私たちが何かを為(な)そうとする時は、彼の精神、すなわち『理想のための闘いに暴力を用いてはならない。そして自らが悪と見なした何事にも与(くみ)してはならない』ことを忘れてはなりません」。
ネルソン・マンデラは1993年にインド政府が与える最も権威ある賞、バーラト・ラトナ賞の授賞式でこんなことを言っています。「マハトマ・ガンディーは、わが南アフリカの歴史に欠かせない存在です。そして、一番重要なことは、この国で初めて真理の実験を行い、この国で正義を追求する彼特有の堅固な精神を披歴し、そしてこの国で闘いの哲学にして、手段であるサティヤーグラハを発展させたということです」。インドで最も重要な権威のある賞が与えられた、科学の分野における天才は、このような形でマハトマ・ガンディーが南アフリカの歴史に不可欠な存在であるということを言っています。
マハトマ・ガンディーの「非暴力は強者の武器である」という言葉を引用して、私のお話を終わりにしたいと思います。多くの人は、非暴力は弱者の手段と考えがちですが、そうではありません。これは、この理由があるが故に私たちは「平和構築に向けた4項目のアプローチ」を開発したのです。
このたびの賞は、私個人に与えられるものでありますが、私たちは「平和構築に向けた4項目のアプローチ」を世界各地で進めていくために頂いた賞で、「平和基金」を創設することを決定いたしております。
皆さまのご清聴に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。