SDGs達成には女性の活躍が必須 明社によるオンライン講演会

2030年に迫るSDGs達成期限の折り返しの年を迎え、堺氏はSDGsの進捗状況を語った

貧困、紛争、気候変動など、人類は今、かつてないほどさまざまな課題に直面している。このままでは、たった一つしかない地球で安心安全に暮らせなくなる――。その危機感のもと、持続可能な世界を実現するための“道しるべ”が、17の目標と169のターゲットが定められた「持続可能な開発目標」(SDGs)だ。

現在、2030年までの達成を目指して国や自治体、民間の企業や団体など、さまざまなレベルで取り組みが推進されている中、立正佼成会が協力団体として参画するNPO法人明るい社会づくり運動(明社)は4月16日、『SDGsを学ぶ――未来へ続く地球社会をめざしてPart2』と題して、オンライン講演会を行った。

昨年6月に発表された持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とベルテルスマン財団による『持続可能な開発レポート2022』によると、SDGsの達成度を表す国際ランキングで日本は19位となり、3年連続で順位を落としている。同レポートは、日本の取り組みに対し、目標4「質の高い教育をみんなに」、9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、16「平和と公正をすべての人に」は「目標達成」と評する一方、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、12「つくる責任、つかう責任」、13「気候変動に具体的な対策を」、14「海の豊かさを守ろう」、15「陸の豊かさも守ろう」、17「パートナーシップで目標を達成しよう」に関しては特に「主要な課題」が残っていると指摘する。

こうした状況に対し、明社ではこれまで、各地の組織・団体が地域の状況に応じて、心豊かに、安心して暮らせるまちづくりを目指し、清掃奉仕などの環境美化活動などを行ってきた。対面での活動が制限されるコロナ禍の中でも、ウェブ会議システムを活用してSDGsの知見を深める学習会を催すなど、取り組みを継続。また、昨年から統一行動日として「SDGs活動の日」を定め、目標11「住み続けられるまちづくりを」をはじめ、12、13、14、15、17の達成を目指して、さらなる行動を積み重ねている。

その一環として開催された今回の講演会は、一人ひとりがSDGsを学び、課題を認識した上で今後の地球社会の未来を考えていくことが目的。昨年9月のオンライン講演会に続く第2弾で、講師は引き続き、一般社団法人環境市民プラットフォームとやま(PECとやま)常務理事の堺勇人事務局長が務めた。全国の運営会員や賛助会員ら41人が参加した。

堺氏は、17の目標と169のターゲットの達成度合いを表やグラフで示し、SDGsは健康診断と同じと説明。SDGsに関するテレビなどの報道では、一人ひとりが意識を変える大切さなどが呼びかけられ、精神論的な取り組みとして捉えられることもあるが、各ターゲットには数値基準が定められており、達成度合いを確認しながら、具体的な活動を進めることが重要と述べた。

その一例として、家事や育児を男女平等に担うことを明記する目標5の4に触れた。25歳から44歳までの男女の一日の家事労働時間は、2016年に比べて21年では、女性は18分減り、男性は13分増えたが、男女間にはまだ約3時間もの開きがあると指摘。「良くなってきているが、差が大きいところにまだまだ課題がある」と述べた。

さらに、日本の達成状況を調査したウェブサイト「ローカルSDGsプラットフォーム」「中部圏SDGs広域プラットフォーム」を紹介。地域ごとの達成度や抱える課題の違いを示すことから、「皆さんの得意な活動や、関心が高い取り組みがどこにつながっていて、どの数字に表れてくるのかを見ながら、さらに具体的な行動を進めていくのが、今後の活動の一つの形ではないかなと思います」と語った。

参加者の質問に対し、具体的なアドバイスを送る堺氏

続いて質疑応答が行われた。このうち、岩手県からの参加者は、北上川の河川敷の清掃活動を30年以上続けてきたことで国土交通省の協力を得られるようになり、活動の認知度も上がって参加団体が増え、広範囲に清掃できるようになったと喜びを発表。一方、この講演会の前日に行った清掃活動では、空き缶が大量に捨てられており、今後、製造企業や販売業者に協力を呼びかけるべきか思案していると打ち明けた。

これを受け堺氏は、目標12や17のターゲットを説明しながら、今は企業も廃棄物の排出量の削減やリサイクル率の向上を意識していると説明。「12の5(廃棄物の発生の大幅な削減)は企業としても何とかしないといけないと考えているので、河川敷のごみ拾いで缶がたくさん落ちている実態を市民団体から企業に伝え、対応を働きかけると、話が通じやすくなる」とアドバイスを送った。

講演会の最後、堺氏はSDGs達成の“レバレッジ・ポイント”(小さな力で大きな成果を生み出す点)として、現在の社会制度で能力や可能性を十分に発揮できていない世界の女性が鍵を握っていると強調。生活目線で物事を考えることができる女性が生きやすい社会を実現することは、弱い立場に置かれる全ての人にとっても生きやすい社会になると述べ、女性の活躍に期待を寄せた。