明社が「こどものためのSDGsセミナー」開催

参加者は、SDGsに掲げられた各目標を学ぶとともに、その達成に向け、日常生活の中でできる取り組みについて考えた

2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)は今年、達成期限の30年に向け、折り返しの年を迎えた。期限内の達成に向け、立正佼成会が協力団体として参画するNPO法人明るい社会づくり運動(明社)は、全ての人がそれぞれの生活とSDGsに掲げられる社会課題を結びつけ、「自分事」と理解し、具体的な行動につなげることが重要と捉え、市民の学びの場を企画。講師には、子供から高齢者まで、それぞれに合った方法でSDGsの啓発や情報発信を行っている一般社団法人環境市民プラットフォームとやま(PECとやま)の堺勇人常務理事(事務局長)を招聘(しょうへい)した。

3月26日には、佼成図書館視聴覚ホール(東京・杉並区)で「こどものためのSDGsセミナー」を開催し、小中学生とその家族ら43人が参加した。当日は、未来を担う子供たちと、そのバトンを渡す側である親世代が共に学ぶプログラムとして、『未来のために考えること―自分と社会の幸せ探し―』をテーマにワークショップを実施した。

模造紙にSDGsの17の目標が記されたカラフルなシールが貼られ、その周りに付箋が一つ、また一つと貼り付けられていく。参加者は班に分かれ、それぞれが抱える「困りごと」を付箋に記入し、SDGsのどの目標に関連しているか考えて、模造紙の上で分類する。30分ほどで、模造紙が付箋で埋まった。

参加者の小中学生の困りごとはさまざまだ。中でも、クラスメートとの人間関係に関連した内容が多く、目標16「平和と公正をすべての人に」の周りには、「教室で友達から無視される」「かげぐちを言われる」といった学校生活での悩みが記された付箋が集中した。このほか、「トマトが嫌い」と書いた女子は目標2「飢餓をゼロに」、「夏がめちゃくちゃ暑い」と書いた男子は目標13「気候変動に具体的な対策を」に、それぞれ付箋を貼り付けた。

「平和」「気候変動」といった地球規模の問題は、一個人での解決策を見いだしづらく、「一人では何もできない」と消極的に考えがちだ。そこで今回のワークでは、自分の生活範囲にある「困りごと」からイメージを膨らませた。SDGsの各目標に分類することを通じ、地球規模の問題につながると気づくことが狙いだ。

さらに堺氏は、参加者に「模造紙に貼ったみんなの『困りごと』を、自分の『好きなこと、得意なこと』で解決する物語を考えてみて!」と語りかけた。すると参加者は、歌が得意なら「音楽で平和の大切さを伝える」、料理が好きなら「食材をうまく料理して無駄を減らす」などのストーリーを班ごとに話し合い、分かち合った。

参加者は班に分かれ、自らの「困りごと」を付箋に記し、SDGsの17の目標に沿って分類。解決方法を話し合った

ワークショップの最後、堺氏は、「自分が何かを我慢して誰かの幸せにつなげることも大事なことですが、自分の『得意』『好き』を生かし、自分がハッピーな気持ちで取り組むことが一番大事だと思います。私たちの日常生活の全てが、実はSDGsにつながっているということを意識して、普段からできることを一つ一つ実行していくことが、周りの人、世界の人の幸せにつながるのではないでしょうか」と結んだ。

民間の識者で構成された「SDGs推進円卓会議」が3月に発表した『SDGs実施指針の改定へ向けた提言』によると、国内のSDGsに関する認知度が約8割に高まる一方、進捗(しんちょく)を見ると「日本の取り組みは不十分」で、特に「貧困やジェンダー、人権など社会に関わる取り組みや認識が弱い」との課題を指摘する。目標達成の期限まであと7年。残された時間は少なく、成否は市民一人ひとりの行動に懸かっている。