「ウクライナとロシアの正教会間対話――WCCとバチカン」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

バチカンがラマダンを機に世界のムスリムへメッセージ

バチカン諸宗教対話省は3月24日、ムスリム(イスラーム教徒)のラマダン(断食月、今年は3月22日から4月20日までの見込み)に際して、世界のムスリムに向けて『キリスト教徒とムスリム――愛と友情の促進者』と題するメッセージを公表した。

同対話省はメッセージを通して、人類の「平和で友好的な共存」が、「狂信主義、過激主義、論議、論争、宗教的動機による暴力」などから挑戦を受け、脅かされていると指摘。そうした脅威が「憎悪の文化によって燃え上がっている」と伝え、ムスリムとキリスト教徒は、「共通の絆を基盤に愛と友情を高揚していかなければならない」と呼びかけた。両者の間にある「宗教、民族、文化、言語、政治的な相違を脅威に感じる」という人が増えているが、「個々人のアイデンティティーの尊重」が大事であり、「われわれが有する共通点を無視したり、忘れたりしてはならない」と訴えた。

さらに、「諸国民の共同体は一つであり、神がこの地球上で生きるようにと創造した人類の起源も一つ」と主張し、「神の栄光が輝き、人類が再一致する、聖なる(天上の)都市へと向かう人類のゴールも一つだ」と注意を促した。

しかし現在、「(別の共同体に属する)他者への疑惑、恐怖、敵対意識、差別、排除、迫害、論争、中傷」などが、SNSを通して流布されていると指摘。「交流と友情の手段であるSNSが、敵対と闘争の手段になってしまっている」と憂慮を表明し、「社会的攻撃が、パソコンやスマホの普及によって、前例のないほど大きな影響を与えている」と伝えた。

こうした人間のネガティブな行動に対応するには、ムスリムとキリスト教徒が「尊重、善、愛徳、友情、全ての人に対する相互ケア、許し、共通善の実現に向けた協力、助けを必要とする人々への援助、私たちが平和と喜びのうちに生活できる安全で快適な場である『共通の家(地球)』の環境保全」などの実践が不可欠なのである。

最後に、全世界のムスリムに宛てたバチカンのメッセージは、「憎悪の文化に対抗するには、愛と友情の文化を滋養していく必要がある」と強調。そのためには、「家庭、学校、礼拝所、SNSなどあらゆる場にいる若者たちに健全な教育を提供すること」が急務だと呼びかけた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)