「バチカンと科学――人工知能の軍事利用」など海外の宗教ニュース(海外通信・本紙バチカン支局)
オランダのハーグで2月16、17日の両日、「軍事領域における責任ある人工知能(AI)利用」に関する2023年度のサミットがオランダと韓国の共催で行われ、各国政府、学術機関、シンクタンク、産業界、市民社会組織などの代表者らが参加した。
1回目となる今回のサミットは、「急速な技術発展を踏まえ、人工知能の責任ある軍事利用について国際的な理解を深める」「国際法上の義務に従い、世界的な安全保障、安定、説明責任を損なわない方法で責任ある利用の重要性を確認する」ことが目的。併せて、議論の内容を宣言文として採択するために開催された。60の国と地域が、サミットで採択された宣言文への支持を表明した。
日本からは、オランダ大使を代表とする外務省、防衛省のメンバーで構成される代表団が参加。バチカンからは、バチカン国務省外務局で多角関係担当官を務めるフランチェスカ・ディジョバンニ氏を代表とする使節団が派遣された。
サミットの中でディジョバンニ氏は、「責任あるAI利用」という表現自体が矛盾していると主張。AIを基盤とするシステムは、「道徳的範疇(はんちゅう)を持ち得ず、自身の行動に関して思考、感知、決断、責任を負うことができない」と指摘し、「人格(人間)と物体の違いを理解し、正当化していくことが急務である」と話した。物体は、命令を忠実に実行し、行動をシミュレートするだけだからだ。
そのため、「自習能力を有する自律型兵器のような、行動を予測できず、目的や範囲も規定されていない武器に武力行使という重要な決断が委託されるならば、行動、効果、責任を決定づけるものがなく、危険を回避できない状態に陥る」と語り、一つ一つの武力攻撃が、(人間によって)評価、正当化される必要性を訴えた。
ディジョバンニ氏は、このバチカンの見解が「(AI)技術の研究、発展、軍事利用を阻止するものではなく」「効用や機能性といった範疇だけではなく、人類のための共通善(公共の利益)の促進といった、適正で有用な利用方法を見据えながら、人間の尊厳性を尊重し、人類の全体的発展を促進していくべきだ」と述べた。
この視点から、バチカンは「不平等を是正し、恐れられている結果を防止しながら、不本意な効果が出てくるのを予防するためにも、さまざまな一般的適用分野においてAIの平和利用を促進する国際機関の創設」を提唱。なぜなら、「AIの軍事利用へ向けた努力が、紛争を完全に撤廃するための、私たちの意識と心の中での責任感を強める、たゆまぬ努力によって支えられなければいけない」からだ。