「教団創立85周年記念式典」で庭野会長が法話 急がず息まず修行精進を (動画あり)

祝辞を述べる菅野管長

菅野日彰日蓮宗管長(同宗大本山池上本門寺貫首) 祝辞

創立85周年、皆さま誠におめでとうございます。

立正佼成会さんがお題目を通じて、世界規模でたくさんの活動をなされ、今日まで人々の心に安らぎを与えてこられましたことに心から敬意を表する次第でございます。

私と立正佼成会さんとの個人的なご縁を申し上げますと、会長先生と私は立正大学で同学でございました。教員室で後ろ姿を見かけました時に、とても親しみを感じさせて頂きました。また、私は50年前に佼成病院に入院しておりました。私の家内の兄の友人が同院の医師であったご縁から、およそ半月、お世話になりました。体が楽になりますと、病院や本部での朝のおつとめに参加させて頂きました。佼成会の皆さんはお経を訓読で読まれます。私たち僧侶の真読と比べて、初めての人にも、すぐ法華経の有り難さが届くのではないかと強く思いました。

お釈迦さまは80歳でご入滅になる前の晩年に法華経をお説きになられました。先ほども拝読いたしました「自我偈(じがげ)」(如来寿量品)に、お釈迦さまは、常にここに住して法を説く(常住此説法=じょうじゅうしせっぽう)、とあります。あなたと一緒にいるんだよ、その私の声を聞きなさいと説かれます。

そのことを日蓮聖人は、曾谷入道殿への手紙に「此の経の文字は、皆悉(ことごと)く生身妙覚(しょうしんみょうがく)の御佛(みほとけ)なり」と記されました。一文字一文字が全部、お釈迦さまのお声であり、お題目をお釈迦さまの声として身口意の三業で受けとめなさいとのことでした。

私は霊鷲山(りょうじゅせん)にお参りをさせて頂いた時に、釈尊に倣って東の方を向いて目をつぶりました。すると、2500年の時間、空間を超えて、お釈迦さまが説法されている会座(えざ)の端っこに私が座らせて頂いているのだという思いを強くいたしたのであります。

「方便品」に「告舎利弗(ごうしゃりほつ、舎利弗に告げたまわく)」とあります。難解難入のお経をどうしたら信じ、成仏ができるか。その答えは「唯仏与仏(ゆいぶつよぶつ)」、釈尊の仏性と舎利弗の仏性とのつながりです。「仏性を信じて私の話を聞いた時、おまえは本当の成仏ができるであろう」と説かれます。

私が霊鷲山で心に思ったのは、この「告舎利弗」は「告菅野」であり、釈尊の仏性と菅野の仏性が通じているということです。法華経の全品を通して、それが説かれている会座の末席に私が座らせて頂いているのです。その感動は、私の安心(あんじん)の瞬間でありました。そしてこのことを人々に説いていくことを誓ったのです。

大学2年の時に、郷里の礼文島(れぶんとう、北海道)から母の危篤を知らせる電報が届きました。母の枕元へ行き、手を握ると、言葉は出ませんでしたが、その手から言葉が伝わってきました。「坊さんは、後ろ姿を見られているんだよ」。口癖だったその言葉が心に響いてきた時に、私は「母さんの声が聞けるんだ」と思いました。私は母の声を通じて日蓮聖人のご遺文の声を聞き、またお釈迦さまの声を聞くのです。法華経の会座の端っこに自分がいるとは、まさにそのことなのです。

皆さんは、開祖さまと直接にお話しされた人、テープで声を聞かれた人と、いろいろかと思います。お釈迦さまの声で説かれた法華経を、開祖さまは、あなたのために説いているのです。仏性と仏性のつながり、「唯仏与仏」と受けとめられることであろうと存じます。
(文責在記者)

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