バチカン諸宗教対話評議会による「諸宗教間の出会いの文化を築く女性会議」が開催

1月27日、ウルバノ大学の教皇ヨハネ・パウロ二世ホールでスピーチする加瀬スタッフ(バチカン支局提供、カーシャ・アルテミアク撮影)

バチカン諸宗教対話評議会は1月25日から27日まで、イタリア・ローマ市内にあるローマ教皇庁立ウルバノ大学で「諸宗教間の出会いの文化を築く女性会議」を開催した。世界カトリック女性組織連合(WUCWO)が協力。世界23カ国からキリスト教、イスラーム、ヒンドゥー教、神道など12宗教を代表する女性指導者30人が参加した。立正佼成会から加瀬育代渉外グループスタッフが出席し、『出会いの文化構築の経験』と題したセッションでスピーチした。

女性による諸宗教ネットワークを求めて

バチカン諸宗教対話評議会は、今回の女性諸宗教者による国際会議の目的について、第二バチカン公会議の諸宗教対話に関する公文書「ノストラ・エターテ」、ローマ教皇フランシスコが公布した回勅『すべての兄弟たち』を基盤とし、「出会いの文化について話し合い、共通点を探して(友情の)橋を構築し、全ての人を対話に巻き込むこと」と発表。その上で、「世界から発せられる女性の声に耳を傾けることは、女性の地位に関する諸宗教の教えと、市民法との間にある格差の是正につながる」と説明した。女性が男性と同等の尊厳性と権利を持つことを明確にし、女性に対する差別、暴力をなくすためには、「それぞれが有する信仰や尊厳性に反する歴史的、社会的抑圧から女性を解放する」必要があるのだ。

同評議会は、2012年の総会で「教育における女性の役割」について討議し、19年には仏教の僧院で仏僧とカトリック女性信徒との対話を実施してきた。これらを通し、「多くの問題を抱える現代社会で、最初に傷つくのは女性であるとの視点から、女性の声を聞く必要性に迫られた」のだ。

25日、女性会議は参加者たちの沈黙の祈りで開幕。次いで、ウルバノ大学のレオナルド・シレオ学長、バチカン諸宗教対話省(諸宗教対話評議会)長官のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット枢機卿、WUCWOのマリアリア・ゼルヴィーノ会長があいさつした。

第1、第2セッションは、『出会いの文化構築に向けた聖典と宗教の教えの中における女性』をテーマに、ヒンドゥー教、ユダヤ教、道教、仏教、ジャイナ教、キリスト教、イスラーム、シーク教の女性指導者が発表。各セッションの後半では、参加者を交えた質疑応答と討議も行われた。

第3、第4セッションは、『出会いの文化構築の経験』をテーマに、キリスト教、イスラーム、アフリカ伝統宗教、ヒンドゥー教、シーク教を代表する女性指導者11人が登壇。女性による特定の文化圏での出会いの文化構築について報告、問題提起した。

26日午前、参加者はバチカンを訪れてローマ教皇フランシスコと謁見(えっけん)した。この中で教皇は、参加者に対して、全世界から12宗教が一堂に会し、「傷ついた私たちの世界で平和、理解を促進していくために、出会いと対話という重要な課題について話し合うのは希少なこと」と強調。この視点から、「女性の体験と願いに耳を傾ける」ことの重要性を指摘し、「女性は、世界に慈しみと生命を与える存在である。平和は、たくさんの女性を巻き込みながら追求されなければならない」と主張した。

一行はバチカンからウルバノ大学に戻り、同日午後の第5、第6セッションに臨んだ。この中で、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、儒教、神道(大本)、ゾロアスター教の女性指導者が、『出会いの文化構築のための女性の聖人と賢女』と題し、自身の宗教から範例を紹介した。

最終日の第7セッションは、再び『出会いの文化構築の経験』をテーマに開催された。本会の加瀬スタッフが、ジャイナ教、道教、仏教(台湾)、キリスト教の女性信徒と共にスピーチした。

この中で、加瀬スタッフは、庭野日敬開祖が「人類すべてが、宇宙の大いなるいのちに生かされている兄弟姉妹であるという法華経の平和思想に支えられ、世界平和のための奉仕こそ法華経に説かれている菩薩行である」との信念で世界平和の実現に向けて取り組んできたと報告。その上で、「諸宗教間の協力が欠かせない」との観点から、本会が長年にわたり諸宗教間対話を基盤とする平和活動に尽力していることを伝えた。

また、本会が行った「イスラエル・パレスチナ和解プロジェクト」を通して出会ったパレスチナ人の友人から、2015年に世界各地でテロ攻撃が頻発した当時、「私たちの心が平和であるならば、そこは安全だよ」という言葉をかけられた体験を述懐。「それ以来、私は折に触れてこのことを思い出し、『自分の心は平和だろうか』と問いかけています」と述べ、女性の在家仏教徒として世界平和に向けた決意を発表した。

この後、『ここ(ウルバノ大学での会議)から私たちはどこへゆくのか』と題した討論会が行われ、女性諸宗教者による国際会議は終了した。