WCRP日本委「新春学習会」 田中優子法政大名誉教授が『江戸時代の価値観と幸福』と題し基調講演

基調講演に立った田中氏は、江戸時代の生活の様子を示し、循環型社会の在り方の大切さを語った

『戦争を超え、和解へ 諸宗教協力に基づく平和構築の実践とは』をテーマに、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の「新春学習会/茶話交流会」が1月26日、立正佼成会の法輪閣(東京・杉並区)を会場に、オンラインを併用して催された。新型コロナウイルスの感染防止策を施した会場には、各教団の宗教者や賛助会員など約100人が参加したほか、約100人がライブ配信を視聴した。

同学習会は、平和の在り方を歴史からひもときながら学びを深め、諸宗教による具体的な平和構築の実践について考えるもの。当日は、『江戸時代の価値観と幸福』と題し、法政大学前総長で名誉教授の田中優子江戸東京研究センター特任教授が基調講演に立った。

田中氏は、浮世絵や書物の挿絵をスライドで示しながら、太平の世が約270年続いた江戸時代の循環型社会の様子を紹介した。ごみや排泄(はいせつ)物は農地の肥料として業者が買い取り、端切れは縫い合わせて新たな着物に仕立てていたこと、森林開発を制限する諸国山川掟(しょこくさんせんおきて)によって適量を守って木を伐採していたことなどを挙げ、経済とは本来、GDP(国内総生産)の増加を目指す現在の価値観ではなく、物作りによって全ての人が幸福感を得るための活動と述べた。

また、江戸時代のコミュニティーの在り方に言及し、ノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の「私たちが生きているのは孤独の時代。私たちの誰もが、とても孤独です。人間性を失わないための、よりどころを探さなくてはなりません」との言葉を引用。江戸時代では、宗教は文化や芸術と同じものと考えられ、自分たちを孤独から救ってくれるよりどころだったと説明し、「宗教を別のところに据えるのではなく、一つの文化として受けとめ、心のよりどころにしていく時代に入っていくことが必要」と強調した。

パネリストとして登壇した光祥次代会長

続いてパネルディスカッションが行われた。菊地功カトリック東京大司教区大司教(同日本委評議員)、WCRP/RfP国際共同議長の庭野光祥次代会長(同日本委理事)、尾﨑元共同通信社「メディア戦略情報」編集長(同日本委国際広報顧問)がパネリストとして登壇。橋本伸作大本東京本部東京宣教センター長(同日本委活動委員)がコーディネーターを務めた。

このうち、光祥次代会長は、昨年9月に行われた第1回東京平和円卓会議の経緯と内容、所感を報告した。参加者の中にはウクライナとロシア両国の宗教者もいたが、会議中に意見が対立して緊張した雰囲気になった際も、誰も離席することなく互いの言葉に真摯(しんし)に耳を傾けていたことなどを詳述。同会議は「平和はゴールではなく、それを目指す旅だという私たちが円卓会議で大切にしたかったことを体現したものと言える」と語った。

その上で、宗教者による平和活動の特徴は、一人ひとりが自らの信仰や教え、自身の心と真摯に向き合いながら取り組むことと説明。WCRP/RfPでは「Agree to disagree」(意見が違うということに同意する)という姿勢を大切にしていると話し、「私にとって平和構築の実践は、いつも自分の未熟さや自己中心性を突き付けられる機会であり、それらと向き合う挑戦」と述べた。

学習会ではこのほか、WCRP/RfP国際委員会で事務総長のシニアアドバイザーを務める根本信博氏による第1回東京平和円卓会議の振り返りや、安勝煕同日本委平和推進部長による「ウクライナ難民人道支援ボランティア」の報告、茶話交流会が行われた。