内心の自由に関わる「共謀罪法案」をテーマに学習会 日弁連から専門家を迎え
宗教者や市民の有志による「時事問題市民学習会」(主催・同学習会)が4月28日、東京・新宿区の施設で行われた。テーマは『共謀罪とは何か――その本質と問題点を学ぶ』。26人が参加し、庭野平和財団が助成した。
当日は、日本弁護士連合会共謀罪法案対策本部副本部長を務める東京共同法律事務所の海渡雄一弁護士が、「テロ等準備法案」(共謀罪法案)の概要や問題点を解説した。
テロ等準備法案は、現在国会で審議されている「組織的犯罪処罰法改正案」に盛り込まれている。犯罪を共謀した計画段階から処罰を可能にするもので、対象犯罪は277に及ぶ。
海渡氏は講演の冒頭、政府が創設の根拠とする国連の「国際組織犯罪防止条約」は、国際テロ集団を取り締まるものではなく、金銭的利益を求めるマフィアを取り締まるための条約と言明。同法案は犯罪対象の内容からも、テロ対策ではなく、過去3回廃案になった「共謀罪法案」と同じものと指摘した。
その上で、日本の刑法は、犯罪が実行されて結果が生じた「既遂」を処罰の原則にしていると解説。「既遂」の前段階で、実行の着手に当たる「未遂」は刑法に定められた取り締まり対象の30%程度であり、犯罪の準備をする「予備」は例外的で、殺人・強盗・放火などの重大な犯罪に限られていると説明した。「予備」の一つである「共謀」は「内乱陰謀罪」「爆発物製造罪」など1%に過ぎないと話した。
海渡氏は、「共謀」の処罰の対象が大幅に拡大された今回の法案が成立すると刑法の原則が崩れ、「犯罪を実際に犯さない限り自由だ」とするこれまでの認識が成り立たなくなると強調。「法律に反する行為」と「反しない行為」の基準が不明確になることから、国家権力が市民社会に介入する際の境界線を大きく引き下げ、市民の行動の自由を狭める懸念があると述べた。
さらに、共謀罪の捜査方法に言及。計画段階から容疑者を特定する主な手段は、盗聴など国家権力による通信傍受と他者による密告であり、現在の法案には、犯罪の実行前に自首すると減免されるなど、密告を奨励しかねない規定が盛り込まれていると指摘した。
こうしたことを踏まえ、「監視されているかもしれないという恐怖の中で市民が萎縮し、(国家に対し)黙ってしまう。そうすると、民主主義のプロセスそのものが機能しなくなる」と警鐘を鳴らした。
また、日本のテロ対策については、すでに国内法が整備されており、欠けている点は、国際的テロ集団の入国を取り締まる水際対策、単独テロ対策と述べた。無差別テロは、その国家への恨みや不満が背景にあることが多く、「日本人が世界平和のために働くことが一番優れたテロ対策。その姿勢を(国際社会に)見せていくことが抑止効果になる」と訴えた。