ウクライナ侵攻によって倍増したイスラエルのユダヤ人移民(海外通信・バチカン支局)

ユダヤ人国家であるイスラエルは、ユダヤ人と2親等までの血族関係であることを条件に、世界に散在するユダヤ人とその家族を受け入れ、国籍を与えている。同国内で施行された最近の調査結果によれば、2022年度に移民としてイスラエルへ入国したユダヤ人の総数は7万人に達し、前年比で倍増したとのことだ。ローマ教皇庁外国宣教会(PIME)の国際通信社「アジアニュース」が12月2日に報じた。

22年度の移民の内訳は、54%がロシアから、21%がウクライナから、5%が米国から、4%がフランスから、16%がその他の地域からとなっている。ロシアからの移民は3万3000人に上り、前年比で400%超。ウクライナからの移民数と合わせると、全体の75%が、激化するウクライナ侵攻によって誘発されたものであると理解できる。ロシアのユダヤ人共同体が、ロシアのウクライナ侵攻に反対する立場を表明していたこともある。

今回の調査結果によれば、過去10年間に、家族を持たない2万2000人の移民がイスラエル軍に入隊し、旧ソ連圏を中心とする世界各地から6440人の医師、2万2400人のエンジニアが同国に入国したとのことだ。だが、こうした旧ソ連圏、ロシアやウクライナからの移民の中には、キリスト教徒と結婚しているユダヤ人も多い。ユダヤ人国家として、彼らの法的な立場をどのようにするかという国家のアイデンティティーに抵触する問題も発生している。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)