教皇がウクライナ国民に向けて公開書簡(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは11月25日、ロシアによるウクライナ侵攻から9カ月が経過したことを機した公開書簡をウクライナ国民宛てに発表した。

この中で、教皇は、「ホロドモール(旧ソ連のスターリンによって引き起こされた人為的な飢餓)と呼ばれた、恐るべき大量虐殺から90年が経過した今、この悪と苦の海を航海する(ウクライナの)兄弟姉妹たちの善意の情熱に感嘆している。非人間的な悲劇を強いられながらも、ウクライナ国民は、勇気を失うことも、哀れみに屈することもなかった。世界が、ウクライナ国民を、勇敢で強靭(きょうじん)な国民、苦しみの中で祈り、涙を流して闘い、耐え、希望を求める、高貴で殉ずる国民であると認知した。私は、彼らの近くに居続ける」と記した。

さらに、人々が「戦争に慣れてしまわないように」と願い、特に、時間が経過してもウクライナ国民のことを忘れ去ることなく、彼らを見放さないようにと呼びかけた。そして、ロシア軍の侵攻開始から9カ月にわたり、ウクライナの地で「不条理な戦いが荒れ狂っている」と指摘。「あなたたちの都市が絶え間ない爆撃によって打ち壊されている。相次ぐミサイル攻撃が、死、破壊、苦、飢え、渇き(水不足)、厳寒(エネルギー不足)をもたらしている」と糾弾し、「私の涙を、あなたたちの涙に交えて、共に泣く」と連帯を表明した。

また、「キリストの十字架の上に、今は、この(ロシアによる)侵攻によって暴発された恐怖に苦しむ、あなたたちの姿を見る」とつづり、「なぜ、同じ人間が、他の人間をこのように扱うことができるのか」という根源的な問いを発している。

教皇は、多くの子供たちが殺害され、負傷し、孤児となっている現状にも言及。被害に遭った子供たち一人ひとりのうちに「人類の敗北」を見ると記した。また、「未来へ向けて育んできた夢を捨て、故国を勇気によって防衛するために武器を手にした青年たち」「夫を失い、沈黙のうちに唇をかみしめながらも、尊厳性と決意を持って、子供たちのために、あらゆる犠牲に耐えている妻たち」にも思いを馳(は)せた。

公開書簡には、自らの命に対する大きな危険性を顧みず、託された神の民(信徒)や他の人々への奉仕のため、市民たちに寄り添う司牧者(宗教指導者)やボランティアたちへの感謝も示されていた。「この数カ月間、気候の厳しさ(厳寒)があなたたちの生活をより悲劇的なものとしているが、カトリック教会の情愛、祈りの強さ、そして、あらゆる場所で生活する世界の兄弟姉妹たちのあなたたちに対する愛を、あなたたちの面影への愛撫として忘れないでください」と呼びかけ、メッセージを結んでいる。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)