平和は諸宗教に共通する核心――ローマ教皇と庭野開祖の“平和の叫び”(海外通信・バチカン支局)

ローマ帝国時代の古代史跡「コロッセオ」を望む場所で行われた「閉会式典」(聖エジディオ共同体提供)

聖エジディオ共同体(カトリック在家運動体=本部・ローマ)が主催する「第36回世界宗教者平和のための祈りの集い」の参加者は10月24、25の両日、14の分科会で、世界平和構築に関する各地域の状況や問題を分析しながら、諸宗教者の責任、役割と貢献を議論した。

『宗教――対話と平和』をテーマに開催された分科会では、赤川惠一国際伝道部部長がスピーチした。赤川部長は、2022年はロシアによるウクライナ侵攻で厳しい苦を強いられている年と指摘しながら、第二次世界大戦勃発前の1938年、現在と似た状況の中で、庭野日敬開祖が立正佼成会を創立し、大乗仏教の聖典である法華経の実践を説き始めたと説明。そして、庭野開祖は教えの実践の根幹として、「あらゆる不和と苦が、自己中心の執着、真実に対する無知、縁起(業)に由来する」という確信を持ったと示した。

さらに、赤川部長は、庭野開祖がこうした無明を克服していくため、共通善(公共の利益)を実現するための社会貢献活動を提唱し、「諸宗教間に平和と協力がない限り、世界平和はない」との信念を持つに至ったと強調。その思いは、第二バチカン公会議に招待されたことでさらに強くなったと述べ、「庭野開祖は、他宗教の指導者たちとの出会いを通して、信頼を基盤とし、さまざまな宗教伝統の違いを尊重する諸宗教間協力によって、世界平和構築への貢献が可能である」と確信し、その実践に尽くしたと伝えた。

25日には、宗教別の祈りが執り行われた後、ローマ帝国時代の古代史跡「コロッセオ」を望む場所で「閉会式典」が挙行された。この中でスピーチしたローマ教皇フランシスコは、「平和は、諸宗教の聖典とメッセージに共通する核心である」と明示し、庭野開祖に通じる確信を表明した。さらに、2022年の私たちの祈りが(ウクライナ侵攻によって)“叫び”になったと悲しみ、「前世紀に二つの世界大戦という悲劇を生き抜いた欧州で、今日も平和が重大な形で侵され、傷つけられ、踏みにじられている。われわれはもう、第三次世界大戦に直面しつつある」と警鐘を鳴らした。

閉会式典でスピーチする教皇(聖エジディオ共同体提供)

そして、「平和の叫び」が抹消できない時点に達しているが、「その叫びは(戦争犠牲者の)母親たちの心から迸(ほとばし)り、難民や避難する家族、負傷者や瀕死(ひんし)状態にある人々の顔面に記されている」と強調。あらゆる戦争は、それ以前の世界をさらに悪化させるだけだと糾弾し、「戦争は、政治と人類の敗北、恥ずべき降伏、悪の勢力の前での敗北である」と述べた。

さらに、今日、「私たちが恐れ、もう絶対に聞きたくないと思っていたことが現実となってきた」と話し、「広島と長崎の体験を忘れ、核兵器が製造、実験され続け、(その使用が)公然と脅かされるようになっている」と非難。「紛争を対話によって(武装)解除させよう」と訴え、1962年の「キューバ危機」に際して、教皇ヨハネ二十三世が世界の政治指導者に向けて発信した「この人類の(平和への)叫びに耳を傾けるように」という和平アピールを引用して、「(キューバ危機から)60年が経過した今でも、教皇ヨハネ二十三世のアピールが現実味を帯びて響く」と訴えた。

また、「この数年間で、諸宗教間における友愛の決定的な進歩が実現された」と喜びを表し、「姉妹なる諸宗教が、兄弟なる諸国民を平和のうちに生きるように支援する」と述べた。

キューバ危機の真っ最中に開始された第二バチカン公会議、それから世界平和構築のための諸宗教対話に関するインスピレーションを得た庭野開祖の確信が、今でも継承されていることをうかがわせた、今回の「世界宗教者平和のための祈りの集い」だった。閉会式典の席上、世界の未来を担う各国の子供たちに手渡された「平和宣言文」には、「核兵器の脅威に終止符を打つための対話を再開」するように強くアピールしながら、「私たち信仰者は、可能な、あらゆる方法を使って、平和のために行動しなければならず」「人々の心から武器を取り除き、諸国民間の和解へ向けて行動しなければならない」と記されている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)