ユニセフ・アジア親善大使のアグネス・チャン氏 シリア難民の現状を報告
内戦の終結を そして人々の尊厳が守られるように
一方、約150万人のシリア難民を受け入れているレバノンには、政府が国連の難民キャンプ設置を認めないものの、「非公式キャンプができている」と語った。学校では難民の児童を受け入れており、訪問した学校でも現地の子どもと一緒に授業を受けていたことを紹介。ただ、家計を支えるために、クラスにいた難民の児童の半数が働いていたと話した。また、レバノンでは、難民は過激派組織から勧誘を受けやすく、ユニセフの教育支援は、その防止になっていると強調した。
アグネス氏はこの後、約300万人と最も多くのシリア難民を受け入れているトルコの状況に触れ、学校ではトルコ語の教科書をアラブ語に翻訳して提供されていることを報告した。また、小学校を訪れた際、女子児童が突然、「目の前で人が爆死する瞬間を見た」という体験を話しだし、それを聞いた別の児童が泣きだして止まらなくなったエピソードを紹介。「多くの子どもたちが、戦争によって心に深い傷を負っている」と語り、内戦の早期終結を願うとともに、難民の尊厳が守られ、共存していく世界、社会の実現を訴えた。
シリア内戦
シリアでは2011年3月、アサド政権に対し、民主化を求めるデモが拡大し、反政府勢力との間で内戦が始まった。14年には政情不安に乗じて、「イスラーム国(IS)」を名乗る過激派組織が北部のラッカを拠点に周辺地域を支配。さらに、その北部では、反政府勢力の一角をなすクルド人勢力が国家樹立の機会をうかがう。シリアは現在、アサド政権、反政府勢力、IS、クルド人勢力による戦闘状態が続く。また、米国を中心とした有志国連合が反政府勢力を、ロシアがアサド政権を支援するなど、戦況はますます複雑になっている。