「ミンダナオ島で『シルシラ対話運動』が活動再開」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

ウクライナ侵攻は道徳的に不正、野蛮で冒とく――教皇

聖座(バチカン)は8月30日、同記者室を通してロシアによるウクライナ侵攻に関するローマ教皇フランシスコの発言について公式声明文を発表した。この中で、「教皇の発言にどのような政治的意味合いを持たせるかという議論が、世論の間でなされている」と前置きした上で、「劇的な状況に関する教皇の発言は、人間生命と、それに関連する価値観の擁護として解釈されるべきであり、政治的見解の表明として受け取られてはならない」と指摘した。

また、声明文では、「ロシアによって開始された多方面に影響を及ぼす侵攻は、道徳的に不正で容認できず、野蛮で無意味、嫌悪すべきであり、(神に対する)冒とくである」と非難する教皇の発言は、明確で一貫しているとも主張する。

バチカンが、公式声明文を出した背景には、「ウクライナよりは先にモスクワに行き、プーチン大統領と会いたい」という教皇の発言がある。さらに、プーチン大統領のウクライナ侵攻を正当化するイデオロギーの「頭脳」とも呼ばれたアレキサンドル・ドゥーギン氏の娘・ダリヤ氏が車に仕掛けられた爆弾で殺害された事件を受け、教皇がダリヤ氏を「狂気の戦争の無実の犠牲者」と称し、ウクライナ政府が教皇の発言を「加害者と被害者を混同している」と批判したことも関係している。

ウクライナ侵攻の和平調停を模索するため、ロシアを名指しで非難することを避けてきたバチカン外交。「侵攻したのはロシア」という見解を明確にし、一部の報道関係者たちからの「ロシアに対する教皇の不明確な立場」という批判に応えていく必要に迫られた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)